レビュー:新潟のアライグマシンポジウム(途中まで)
新潟ワイルドライフリサーチ
アライグマシンポジウム
『新潟県のアライグマ-現状と対策を知る-』
2020.10.3
のレビューです.
私用により途中までしか参加できておりません.
新潟ワイルドライフリサーチといえば,獣害対策で有名な団体.
獣害対策は,害獣を「獲ればいい」っていうものでもない.
その生態など専門知識を総動員しなくてはいけない.
そこで,専門知識とともに地域が自力で獣害対策できるように支援するというのが,このNPOのかっこいい魅力!!
今日(2020.10.3)はそんな新潟ワイルドライフリサーチさんのアライグマシンポジウムでした.
赤字は自分の感想.
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目次
1. アライグマの基礎生態と新潟県における分布について
2. アライグマの獣害対策と個体数管理について
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もともと上越市で開催する予定だった
→住民が対象なのかな?
基本的な内容を丁寧に,現地の話もたっぷり
1. アライグマの基礎生態と新潟県における分布について
・原産国などの説明
・「アライ」の由来→アカハライモリなどの毒を臭いで判断し,獲物をこすって食べる
・日本以外にもドイツ,フランス,ベラルーシ,アゼルバイジャンでも外来種
・春は植物や哺乳類(モグラやネズミなど) 松尾2007
・夏はカエルやトンボも 松尾2007
・産仔率:1歳で2.6,2歳以上で3.1
・捕獲数と個体数増減について(↓よくあるコレ)
・生まれてから半年で成獣とあまり変わらない大きさになる(幼獣は半年とみてよい)
※"幼獣は半年とみてよい"は初めて聞いたが,生理的な話ではなく個体の大きさの話かな?
・分布域で10年間で約3倍
・分布域は都市中心,数年で一気に分布を拡大する
・農業被害額は3億7千万(サルが8-9億)
◎新潟県でのアライグマ情報
・1996に捕獲情報(未詳)
・2015にセンサーカメラで1個体確認
上越・糸魚川・三条などでロードキルや目撃情報
糸魚川:
ほぼ全域(52/72ヵ所)
都市に多い←都市中心に寺社仏閣(調査地)が多いだけでは?
河川との有意差なし=もうすでに広がりきった?
上越:
糸魚川より低いものの全体的に分布(54/104)
河川との有意差なし=もうすでに広がりきった?
南部に一部痕跡なしの寺社仏閣が固まってる→なんでかはわからん
どこが最前線?どこが定着済?そういった分布状況を把握することが大切.
2. アライグマの獣害対策と個体数管理について
・タヌキやアナグマ,ハクビシンなどに紛れて見過ごされているかも?(アライグマ含めて夜行性だから視認しにくい)
◎防除計画外来生物法(防除計画)と鳥獣保護管理法(有害鳥獣捕獲)での捕獲枠組みの違い
cf. 捕獲の法的枠組み
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
◎在来種と外来種の目標の違い
在来種:絶滅せず,被害低減につとめる
外来種:最終的に根絶を目標
・初動が大事
普及啓発→集中捕獲→地域根絶
・様々な分布調査(痕跡調査,爪痕調査,餌トラップ法など)
cf. 餌トラップ法について
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
◎個体数管理色んな種類の罠がある
箱罠
エッグトラップ
(株)三生:見せない小型捕獲罠(図3)
(株)サージミヤワキ:楽トリー(図4)
cf. エッグトラップについて
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
cf.各種捕獲方法の長所短所について
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
※中身を見せない罠,らく捕りーはいずれも今年(2020)販売開始とかの最新罠!!知らなかった!!近いうちに記事書くかも.書かないかも.
※中身を見せない罠について,これは1頭捕まったときに他の個体がその捕獲された個体を見て学習(スレ)しないようにするというもの.最初は普通の箱罠みたいなかんじだけど,トリガーが作動すると隙間が閉じ,外部から中が見えなくなる仕組み.ただし,従来の箱罠と同様,アライグマの選択的捕獲はできない.そのため,タヌキやネコがトラップハッピー化する可能性は十分あり.あと高い(2万円以上).
※らく捕りーは,選択的トリガー付き箱罠に分類されるものかな.今までは行政向けのラクーンキューブしかなかった.研究例は茨城県博物館などであるものの,一般向けとしては初(個人観測).しかも,そのままCO2ガス殺までできるという優れもの.また,トリガー餌はアライグマ以外獲れないので,他獣種のトラップハッピー化は軽減可能.
しかも,ハバハート社の従来の罠に追加オプションとして付けることも可能.
ただし,箱罠は一般に誘引餌を多く使う傾向にあるので,トラップハッピー対策としては誘引餌に工夫が必要.あと高い(3万).
・狩猟免許非保持者への規制緩和→ただし,見回りや動物福祉の講習などをしっかりと
・被害発生前から捕獲開始,罠の個数はできるだけ多く
・集中捕獲:メス・幼獣は減少する,オスは減らない(∵オスは定着性低い)
・高密度→低密度200-300mに1つ設置すれば定着メスを減らすことができる
cf.低密度管理(=遅滞相管理)については,各種資料やシンポジウムでもあまり触れられていない印象だったので,新鮮だった!!
この研究については以下のレビューをcheck it out
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
・交尾1-3月,出生3-5月→ここで獲りたい
①夏-秋に捕獲場所選定
②1-5月に水系単位で集中捕獲
※水系単位で捕獲っていうのは,なかなか指摘されていなかったポイントなのでは?捕獲を実施するにあたって,目標(CPUE)と実施単位っていうのは結構重要になってくるのかもね.
◎被害対策
・カメラやトラップで犯人捜し
黒マルチトラップ:黒マルチの中央に餌,周りに水を撒く
※この方法すごく簡単そう!!アライグマの生息調査だけでなく,環境教育とかでも使えそうだと思った.ただ,これはアライグマ以外の動物にも反応するので,アライグマの生息有無を調べる目的なら先述の餌トラップ法の方が優れていると思う.
・電気柵で守る:管理を怠らない,24時間通電,防草シート(絶縁体なので,畑外は20cm以内)
※防草シートの畑外20cm以下,これは知らなかった!!防草シートは絶縁体なので,前肢後肢両方乗ってしまうとアースが確保できなくて動物に通電しないらしい.だから,後肢は地面につくように,防草シートは短めに設置することが大切.
・正しい設計/施工/管理
・「大事なものは労力を払ってでも守る」という原則を
貴金属は金庫に入れるでしょ?守るためにはコストがかかる.これは仕方のないこと.
◎生息地管理
・イノシシなどと違い,すでに集落内にいる
・放置果樹の管理/有刺鉄板(木を登れなくする)など
※これはクマとかでも同じだよね
・緩衝帯は電気柵周りから,できる範囲で
※理想論だけでなくて,この「できる範囲で」ってスタンスが,現場主義の新潟ワイルドライフリサーチさんのいいところだと思う!!
・「集落をアライグマにとって"魅力のない"ところに」
魅力とは餌があり,安全な場所
以上!!
※
『3章上越市における希少な両生・爬虫類』は,あまりアライグマについては触れられていないので割愛.でも,色んな両生・爬虫類がいるんだね.
パネルディスカッションについては,私用で出席できなかったので割愛です...涙