アライグマ備忘録

アライグマに関するメモです.コメントとかで議論出来ても面白いかもね.アライグマについて詳しく知りたいな~っていう人向けです.

武蔵野アライグマ #4 論文出版!!(渡邉 2023)【レビュー】

今日は論文紹介 兼 ご報告
この度...やっと初の査読付論文が発行されました!!!
査読付論文を出すというのはわりと夢だったというか一つの目標だったので、ひとあんしんです...


論文のレベルとしては高くないんだけど、ちゃんとした形で出せたというのは大きい...!!
そして、本ブログの連載?武蔵野アライグマ調査報告の第一章完結です!!

 

ということで、今回は
渡邉(2023)爪痕調査と捕獲記録に基づく狭山丘陵のアライグマ生息状況の評価
を紹介します

www.jstage.jst.go.jp



 

本論文は題名の通り爪痕調査と捕獲記録から狭山丘陵のアライグマの生息状況を調べたというもの。


狭山丘陵は自然豊かな里山なんですが、アライグマにとっては最高な環境。
同時にトウキョウサンショウウオなどアライグマに捕食される希少種も生息しています。

cf.トウキョウサンショウウオ:長期調査で分かった個体群の衰退と絶滅

http://salamander.la.coocan.jp/salamander/pdf/20report/20report_tl.pdf


狭山丘陵の保全のためにはアライグマ対策も必要!!...なんですが、実はアライグマの生息状況(どこで多いとか)は全くわかっていません。
所沢市(狭山丘陵囲む6市町のうち北東の市)では爪痕調査やカメラトラップ調査が行われているのですが、狭山丘陵全体のスケールではわかってない
しかも難しいことに、狭山丘陵は東京と埼玉にまたがる丘陵。行政界を超えた調査は行政的にはやりづらいよね...

cf. 所沢市におけるアライグマ生息状況調査

https://www.totoro.or.jp/goods_books/report/img/ho11_2.pdf

cf. 近年の狭山丘陵における中型哺乳類の生息状況とその変化-アライグマの定着・増加による在来哺乳類への影響-

waseda.repo.nii.ac.jp

 

そこで、私は「とりあえず超ざっくりでいいから狭山丘陵のアライグマのこと調べておきたいよね」ということで、
簡易に広範囲を調べられる
・寺社仏閣の爪痕
・捕獲情報
の2点を調べ、分析しました。

 

しかし、寺社仏閣の爪痕は以前記事で書いた↓のように精度が低く、問題点が多い手法。

satoyaman-raccoon.hatenablog.com

 


そのため、今回の結果は「ざっくり広く見る」ということが目的だということに留意が必要です。
たまにこの爪痕データを解析している論文もありますが、個人的にはデータ一つひとつの信憑性は低い手法なのであまり解析とかはしないほうがいいかと...
ただし、何度も書くように専門的な技術を用いずに広範囲の大まかな状況を把握する手法としては有用。
生息状況がわかっていない地域の、とっかかりの調査としては最適だと思っています。

 

 

短報でカロリーも低い論文なので、方法と結果はあっさり言っちゃいます。

 

おそらくですが、東京は西から東にアライグマの分布が拡大しています。
そして!!本論文執筆時点(2022.3)では、東村山市は捕獲ゼロでしたが、2021年度から捕獲され始めているらしい...

cf.東村山市web site

www.city.higashimurayama.tokyo.jp


東村山市は分布の最前線といえるかもしれません。

今度(来年度になると思うけど)、東村山市の中大型哺乳類相に関する報文も出そうと思っているで、乞うご期待。

渡邉(2023)より引用

 

 

 

そして、今回の結果を踏まえて、我々はどう狭山丘陵を保全するべきか考える必要があります。
もちろん
1捕獲圧をあげる
ことは重要です。そのためには、
1'住民への普及啓発・免許不所持者への講習
などの整備が必要でしょう。

 

そして、個人的には
2保全優先地域を選定、重点対策をする
が必要だと思います。正直、すぐにはアライグマ減らせません
しかし、それでは地域絶滅してしまう種がいるかもしれない。そこで、重点的に保全する地点を決めて、重点捕獲(攻)や柵による防護(守)などをすすめるべきではないでしょうか。

 

最後にはなりましたが、本論文は多くの方の協力があって書き上げることができました。
指導教員をはじめ、お世話になって皆さまありがとうございました。
調査手伝ってくださった皆様、ありがとうございました。

 

2023.11.05執筆