【ポスター賞いただきました】野生生物と社会学会2021ポスター発表参戦します
2021年11月3日から始まる野生生物と社会学会.
自分は武蔵野アライグマ第一章の集大成引っさげて馳せ参じます!!
今回から単著での参戦.
そういうとかっこいいけど,強大なバックアップがない中での参戦になります.
(指導教官に添削はしてもらったけど)
アライグマ関連の研究は当分孤軍奮闘しますが,どうぞ優しい目で見守ってください!!
※ポスター賞をいただきました!!大変光栄な賞をいただきまして,本当にありがとうございます.
これを励みに,武蔵野アライグマの調査・防除に一層力を入れたいと考えております.(2021.11.06 追記)
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1. 今回の発表内容
2. 発表には入れられなかった内容
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1. 今回の発表内容
狭山丘陵は東京都と埼玉県の境界に位置する独立丘陵.
両生類の生息地としても重要で,トウキョウサンショウウオやトウキョウダルマガエルなどの希少種も生息する.
一方で湿地はアライグマが大好きな景観.そしてアライグマは里山も大好き.
埼玉県では捕獲頭数も年々増加している.
…もしかして狭山丘陵のアライグマやばいのでは??
しかし,狭山丘陵に関するアライグマの情報はめちゃくちゃ少ない.
今回は「狭山丘陵のアライグマはどんなかんじに分布しているの?」ってことをざっくり広い範囲対象に検証することを目的としました!!
重昆(2011)は狭山丘陵の哺乳類情報をまとめた.アライグマの目撃情報などもまとめており,これによると2000年ごろから定着が始まったようだ.
しかし定性的な報告にとどまり,狭山丘陵全域におけるアライグマの生息状況やその年変動まではわからなかった.
cf. 狭山丘陵の哺乳類
https://www.totoro.or.jp/goods_books/report/img/ho8_ho2.pdf
堀井ほか(2014)は所沢(狭山丘陵北東)のアライグマ爪痕を調査した.所沢におけるアライグマの定着を示唆した.
一方で,狭山丘陵北東の情報にとどまり,狭山丘陵全域におけるアライグマの生息状況は依然として不明.また,爪痕調査も様々な問題をはらんでいる.
cf.所沢市におけるアライグマ生息状況調査
https://www.totoro.or.jp/goods_books/report/img/ho11_2.pdf
東出ほか(2019)は(主に)所沢におけるカメラトラップ調査で狭山丘陵の動物相とその経時変化を評価した.2011 vs 2013 vs 2016のカメラトラップ調査結果を比較し,アライグマの増加傾向を指摘した.
一方で2013年と2016年は所沢のデータにとどまる.2011年は狭山丘陵全域を対象にしているものの,7地点と調査地点数が限られている.
cf. 近年の狭山丘陵における中型哺乳類の生息状況とその変化―アライグマの定着・増加による在来哺乳類への影響―
cf. [レビュー]近年の狭山丘陵における中型哺乳類の生息状況とその変化―アライグマの定着・増加による在来哺乳類への影響―
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
以上から
・2000年代から定着が始まったらしい
・所沢には2014年くらいには定着しているようだ
・所沢では増加傾向にあるらしい
とわかったものの,狭山丘陵全域を包括して論じることはできてない.
そこで,狭山丘陵全域のアライグマ分布状況を
・寺社爪痕調査
・捕獲実績分析
の2つの視点からざっくりと明らかにしてみた.
まず寺社爪痕調査.
これは↓でまとめているもの.
堀井ほか(2014)と判断基準が違うからか,割合とかはけっこうブレているものの
おおむね傾向は掴めたかな.
南東の東村山市では爪痕は少なく,それ以外の市では結構しっかり見つかった.
捕獲データのざっくりまとめは下の通り.
ポスターではちゃんと年度比較できるようにまとめるけども…
一番大事なCPUEは年変動を抑えたいので,2017-2018の合算してみたよ.
東村山市は捕獲努力量が少ないのが気になるが,どうやら東京は東西方向に勾配がある(西の方が生息密度が高そう)ようだ.
以上が発表するざっくりとした内容.
2. 発表には入れられなかった内容
あとは自分でやってみたプラスアルファ情報など.
まずは爪痕の分布について.
なんか森林に近いほど爪痕が多そうな気がしたので…
100 mグリッドごとの土地利用データをもとにして,半径400 m以内における森林のセル数を解析した(まだこのときは調査終わっていなかったので2~3点調査していない)
結果,アライグマの爪痕がある寺社の周辺は有意に森林が多いことがわかった(t検定,p<0.05).
しかし,ここから「アライグマは森林を好む」としてはいけない!!
超雑な解釈をしても2通りの考え方ができるよね.
①アライグマは森林を好む
②寺社爪痕調査は環境要因が大きなバイアス
①は単純な解釈で,アライグマが森林を好むから森の中の寺社で爪痕が多いというもの. ②はアライグマの数が同程度でも,森林の寺社ほど使われやすいというもの.これは林内と街中での住環境資源の問題.林内は隠れ場が街(側溝,暗渠,空き家,倉庫…)が少なくて,寺社の相対的な価値が高い可能性.
その他に,アライグマが少なそうな東村山(森林が少ない)が結果を引っ張っているんじゃないか?面積が重要なのか林縁からの距離の方が大事なのか?など問題の多い解析です.
そもそも,先述の通りアライグマ爪痕調査は精度が低く,低量調査としても危険性を多くはらむもの.
これをもとに多くを語るのは,砂上の楼閣というかまずい材料で料理をつくるようなものなのであまり深入りはしません.
続いて,必要捕獲努力量について.
神奈川とかは目標としてどれくらいわなをかけたらいいかを算出している(必要捕獲努力量).
cf. 各自治体のアライグマ防除計画比較
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
算出方法の正式な出し方はわからないけど,おそらく
・CPUEと生息密度の回帰モデルから生息密度・生息数を算出
・先行研究の個体群動態モデルからアライグマを減らすor根絶するために必要な捕獲数を算出
という流れだろう.
生息密度の回帰モデルは北海道と千葉で算出されている.
https://hokkaido.env.go.jp/wildlife/mat/data/m_2_2/m_2_2.pdf
cf.浅田(2009)千葉県におけるアライグマの個体数試算(2009年)
個体群動態モデルは兵庫から.
cf. 坂田(2009)生息頭数変化に及ぼす捕獲効果のシミュレーション
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010912451.pdf
狭山丘陵周辺で捕獲努力量がある程度あってCPUE算出されている3市町で計算してみた.
東大和はかなり頑張っている一方で,武蔵村山市や瑞穂町はもっと捕獲圧かけないといけないという結果に…
瑞穂町なんてあと3.5倍かけないといけないらしい.
しかし,回帰モデル自体が粗いのに加えて,調査地も違うだめかなり粗い推定になり科学から離れすぎてしまうので,ポスターや短報には含めません.
ズレすぎた目標設定は逆効果の可能性もあるしね.
という感じで,武蔵野アライグマ第1章は2021.11.7で幕を閉じます!!
第2章は餌トラップとか,より精度の高い狭山丘陵の調査とか.の予定!!
それでは野生動物と社会学会でお会いしましょう!!
Let me see your gun-finger!!
以上
2021.10.27. 執筆
2021.11.06. 追記