武蔵野アライグマ #2調査報告①-爪痕調査(東村山市)-
~前回までのあらすじ~
武蔵野におけるアライグマの生息状況を調べようと思った.
先行研究をざっとあたると,埼玉では報告が多い一方,東京での報告は少ない.
埼玉の報告や埼玉・東京の捕獲数をみると狭山丘陵周辺に多く生息してそう.
しかし,狭山丘陵西端に位置する清瀬,東久留米,東村山は特に報告が少ない.
...ということで,文献調査もそこそこにフィールド調査に繰り出しました.
今回の目的はずばり「報告少ない地域のアライグマ生息状況の把握」!!
先述の通り,清瀬,東久留米,東村山では特にアライグマの報告が少ない.
これは大きく分けて2つの解釈ができよう.
①生息数が少ないから報告が少ない
→この場合,アライグマ低密度地域として管理をする必要がある.外来種は侵入初期の対策が重要.もし低密度地域なら,今こそ力を入れるべし!!
②実際は結構生息しているが報告が少ない
→この場合,知らぬ間に生態系(+住環境,農作物,文化財,健康...)が脅かされていることになる.かなりまずい!!
どっちなのかは調べてみないとわからない.
ひとまず「浅く広く」調べてみよう.
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目次
1. 調査概要
2. 結果
3. 考察
4. 今後の予定
5. 注目!!北山公園
6. 謝辞
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1. 調査概要
今回,アライグマの生息を「浅く広く」調べる手法は「爪痕調査」.
これについては後日記事を書きます.
こちらが詳しいです↓.まとめるまではこちらをご参照.
簡単に言うと,木造の寺社仏閣をめぐり,柱につく爪痕を調査するというもの.
爪痕の様子でアライグマが来ているのかどうかがわかる.
アライグマ→5本の平行な爪痕
ハクビシン→4本の平行な爪痕(ネコも?)
様々な注意点はあるけど,それは後発の記事でこちらから.(2021.4.25追記)
cf. アライグマ爪痕調査について
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
この手法は狭山丘陵北部の所沢市でも行われている(堀井ほか 2013).
その比較ができるというこのともふくめて,まずは東村山市で調べてみよう.
調査は2021年2月に行った.16の寺社仏閣を調査.
マップル地図(1:10,000)では約20の寺社仏閣が記載されているので,約8割といったところ.
追々残りの調査もします.
追加調査を終えて24の寺社仏閣を調査.マップル地図(1:10,000)に記載された寺社はおおむねまわれました.(2021.2.19追記)
また,ついでに湿地が広がる北山公園で足跡を探しました.
結構な面積の湿地だったが......!?
2. 結果
結論から言うと...アライグマ痕跡ほとんどなし!!
しかし,市の中央部でも発見されたよ.
緑地とかから広まってきたと考えると,ここにだけしかいないって考えるのは無理がある.緑地から広がってきたか...川を伝って入ってきたか...
また,国宝建造物(東京では2つしかない)の正福寺千体地蔵堂にもアライグマの爪痕が.アライグマの爪痕は1-2つしかなかったけど,ハクビシンらしき爪痕は結構あった.
文化財被害を改めて痛感.
しかし,最近の目撃は少ないそう.
湿地が広がる北山公園ではアライグマはおろか,中型以上の足跡は発見できず.
隣接する八国山緑地の湿地でも同様.
ちなみにハクビシンはこんな感じ
アライグマと違い,ハクビシンの痕跡はほとんどの地点で確認された.
また,侵入の可能性がある(痕跡が結構多い)地点も多かった.
3. 考察
今回の結果では,アライグマの爪痕痕跡は少なかった(2地点).
所沢市の先行研究(堀井ほか 2013)と比べてみよう.
cf. 所沢市におけるアライグマ生息状況調査(堀井ほか 2013)
https://www.totoro.or.jp/goods_books/report/img/ho11_2.pdf
所沢市の結果の凡例は以下の通り
●:現在も侵入
○:過去に侵入
▲:現在も訪問
△:過去に訪問
□:痕跡なし
所沢市では狭山丘陵周辺で痕跡が多かったみたい.東村山市との境は特に頻繁に利用しているわけではないものの痕跡は残っていたようだ.
今回の調査結果は,不自然とまでは言わないが,ちょっと痕跡が少ないように思える.
狭山丘陵からあまり南下していないのだろうか??
先述の可能性,
①生息数が少ないから報告が少ない
or
②実際は結構生息しているが報告が少ない
は正直まだわからない.
しかし,広い湿地が広がる北山公園で足跡が見られなかったのは興味深い.
今は繁殖期だし,足跡たくさんついているとは思ったんだが...
もしかしたら生息数,少ないかもしれない.
今後はもっと解像度の高い調査が必要だな.
今回15地点の調査でアライグマの痕跡があった2地点はいずれも大きな寺社(2棟以上ある).やっぱり寺社の爪痕調査は,寺社の規模がバイアスとしてかかると思う.
だから,爪痕がないこと=不在データと捉えてはいけないのは注意点だね.
4. 今後の予定
今後も「報告少ない地域のアライグマ生息状況の把握」を進めていこうと思う.
具体的には3点.
①継続-東-
→清瀬や東久留米など報告少ない地域を爪痕調査で「浅く広く」
②継続-西-
→捕獲数が多く,生息も多そうな東大和,武蔵村山でも爪痕調査を.
生息密度が明らかに違うなら爪痕調査の結果も差が出るはず!?
③より解像度の高い調査
→餌トラップ法による在不在調査,カメラトラップ調査など
cf. 餌トラップ法
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
当分捕獲とかはできないかな~
調査やってみたいって人は連絡ください笑
TwitterのDMでも,コメントでも.
(中高生以上,中高生は保護者の許可を)
5. 注目!!北山公園
北山公園や八国山緑地は外来種対策に力を入れているみたい!!
北山公園には外来種回収ボックスがあったよ.
子ども(+大人も)がつかまえたアメリカザリガニやウシガエル(いるの!?)を回収するらしい!!
アライグマも捕まえて入れようかな!?(冗談です,許可ない捕獲はアライグマでも基本的に違法です)
また,池ではアメリカザリガニ侵入防止のネットもしてあった.
こうやって保全に力入れてくれるのは見ていてうれしいし,何か手伝いたい!!
6. 謝辞
調査同行してくれた社会活動家同期とサークル後輩2名に感謝とリスペクトを!!
何か感想,考察,疑問,議論等ございましたらコメントください.
2021.2.17.執筆
2021.2.19.追記
2021.4.25.追記