捕獲圧あげたらCPUEはどうなるの①(雑論文紹介 Skalskiほか1983)
捕獲圧あげたらCPUEはどうなるの①
(ざっくり論文メモ Skalskiほか1983)
アライグマのモニタリングについて,考えてみた.
密度指標の捕獲効率って,捕獲努力量変えたらどう変動するの??
今回の内容は要約するとこんな感じ
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・アライグマの密度指標として捕獲効率(捕獲数/捕獲努力量)が用いられる
・でも,同じ密度でも捕獲努力量あげたら分母大きくなるから値としては下がっちゃいそう
・では,捕獲効率(捕獲数)と捕獲努力量の関係ってどんな感じなの?
・捕獲数E(n)は↓の関係らしい(Nが個体数,cが係数,fが捕獲圧),つまり捕獲圧は次数に来る
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目次
1. はじめに
2. 本編
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1. はじめに
アライグマの生息状況を知るためには,増減や密度の濃淡を知ることが重要だろう.
でも,実際の個体数などはどうやったってわからない.
そのため,我々は密度指標を用いてその動物の様子を推し量る
例えば,シカでは個体群密度が高くなったら...
・シカの糞が増えるんじゃない?=糞粒密度・糞塊密度
・目撃されやすくなるんじゃない?=目撃効率
・捕獲されやすくなるんじゃない?=捕獲効率
・調査したら見つけやすくなるんじゃない?=区画法・ライトセンサス法・撮影頻度
などなど,複数の結果からシカが増えたか減ったか推測する.
しかし,アライグマの場合は,糞は見つけづらく,目視もしづらい.
そのため,アライグマで用いられる密度指標は主に2つ
・捕獲効率
・撮影頻度
cf. 研究ベースでは足跡トラップ法も有効とされる
岩下ほか 2016アライグマ(Procyon lotor)防除事業のための分布域と相対密度に関する研究
https://nodai.repo.nii.ac.jp/record/644/files/2015-728.pdf
このうち,実際に行政が主導でアライグマ対策するとき,中々カメラトラップ調査はできないので,捕獲効率が大事だといわれている(ぼくもそう思う)
ただし,密度指標ってことは,
「密度が高くなるほど,密度指標の値も大きくなる」
という前提がある.
言い換えれば
「密度が同じだったら,密度指標の値も変わらない」
という前提を持っている.
しかし,捕獲効率は捕獲数÷努力量(100わな日)という割り算で算出されるため.
めっちゃ罠かけたら捕獲効率の値は下がってしまうだろう
これはこまった...
それじゃちゃんとした密度指標にならないんじゃない?
ひとまず,「どれくらい捕獲圧あげたら,どれくらい捕獲効率は下がるの?」という点を調べてみよう.
2. はじめに
ということで,関連論文を読んでみました.
Skalskiほか(1986)Competing probabilistic models for catch-effort relationships in wildlife censuses
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0304380083900455
これは,仮想の状況から2つのありえそうなモデルを構築し,
実測値(ネズミの標識再捕獲による個体数推定値)との整合性を調べ,
その有効性を調べた研究
今回は,結果としてよかったモデルを備忘録残すよ
まず,ある調査地(面積A)における全個体(N頭)のそれぞれについて考えてみる
それぞれの個体について,そのすぐ近くにわなを置いたら捕獲されるとしよう.
この「すぐ近く」を"捕獲範囲a"としてみる
[まずある1個体について考える]
では,わなをひとつ置いてみる.
この個体の捕獲範囲aにたまたまその罠が入る確率は,a/Aとなる
この個体の捕獲範囲aにたまたまその罠が入らない確率は,1-a/Aとなる
次にわなをf個置いてみる.
この個体が捕獲されない(f個のうち1個も捕獲範囲に置けない)確率は,
逆に言えば,捕獲される確率pは
計算しやすいように&わかりやすいように式変形をしよう
よくわからん定数のf乗ってやだな(a/Aは定数だが)
ネイピア数eの累乗ならよく見る形だよね
ということで,式変形してネイピア数eの累乗の形にしてみる
ので,(1-a/A)^fをまずlogとって,exp()とってみる(値はかわらない)
元の式に戻すと...捕獲される確率pは
このとき,定数項 log(1-a/A)を-cにおきかえると(log(1-a/A)は負の数),
[つづいて,個体数Nの地域で考える]
以上では1個体が捕獲される確率pを考えた.
これがN頭いるのだから,捕獲数nの期待値E(n)は
ここで2次式にテイラー級数展開*で近似すると**
*ブログ筆者はテイラー級数展開知らなすぎるので,式変形の詳細は分からん(ググった程度).2次式に近似すると↓になるようだ.
というのも,e^xのテイラー級数展開は↓らしくて,これを2項目までやると↑になるっぽい
https://k-san.link/exp-taylor/
**論文では,ここらへんから「個体群ごとの考え方」から「プロットごとの考え方」に移行しています.個体数N→各プロットの個体数=平均μの乱数,捕獲努力量f→プロットiの捕獲努力量fiみたいな感じ.でも自分用メモは簡潔にしたいので,このままいきます
したがって,捕獲効率n/f(頭/わな日)の期待値E(n/f)は,両辺を努力量fでわって
つまり,たしかに個体数が多いところでは捕獲数も捕獲効率も大きいけども,
捕獲圧をあげると上の式に従って,上り幅が小さくなっていく.
例えば,同じ個体数だったとしても
わなを増やせば増やすほど,捕獲数は↓のようになる
そのときの捕獲効率は↓となって値自体は小さくなってしまう.
CPUEを密度指標として使っているものの,同じ生息密度だったとしても捕獲努力量によって値が変わってしまうようだ...
ではどうすればいいか...
結論:わからん
なんか捕獲努力量を式変形して補正CPUEみたいな比較できる値にならないかな~とおもったけど,
全く思いつきませんでした.
とすれば,
・複数の密度指標と比較したり,REST法などで密度推定して比較することでcを推定
・地域全体でcが同一であると仮定して,外挿し,補正?する.
とかはできるかも?
でもそんなに調査研究にコストかけるべきか?
だってそもそも捕獲の質がバラバラ.地域によっても捕獲率とか違いそう.
だとすると,ラフな値であることを前提に考えるべきなのかも.
例えば,生息状況を推測するモニタリングとしての捕獲効率は,捕獲努力量で用いるデータにフィルターかけるなど.
○○<捕獲努力量<△△の地域でのみ算出するみたいな
.
全データ使った捕獲効率によるモニタリングと,上記のような一部データのみ使ったモニタリングで得られる傾向に違いがあるかを考える必要があるかもね.
今後も「どういうモニタリングが必要か」について,考えていこうと思います
ご意見あったらコメントや何やらください.
以上
2023.10.1 執筆