狩猟?管理捕獲?有害鳥獣捕獲?-野生鳥獣捕獲の行政的枠組みの整理-
狩猟?管理捕獲?有害鳥獣捕獲?
-野生鳥獣捕獲の行政的枠組みの整理-
アライグマの捕獲って法律的にどうなの?って話
ネコとかシカ,イノシシにも大体共通です.
(とくにネコの捕獲は炎上しやすいから知識が必要よね~)
このメモは,ぼんやりと理解していたものがすっきりするために書いたものです.
特に
・鳥獣保護管理法と外来生物法の折り合い
・アライグマ許可捕獲って誰に許可とればいいの?計画書いている自治体?
っていうのがすっきりしてよかったです.
あと,先月くらいに
許可捕獲∋有害鳥獣捕獲,第二種特定鳥獣管理計画
っていうの知って「ほーん」ってなりました.
法律複雑すぎるんで,間違えているかも.
コメントでご指摘願います.
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抄録(自分の考えも含めたまとめ)
野生動物管理に関係してくる捕獲は
◎行政枠組み別に3種類
・狩猟(鳥獣保護管理法)
・許可捕獲(鳥獣保護管理法) ...この中に有害鳥獣捕獲も第二種特定鳥獣管理計画も
今回は↑を根底に備忘録.考え方としては,下記の目的で考えるべき.
◎目的別に3種類
・生態系保全等のための捕獲
(アライグマ:外来生物法の防除/シカやイノシシ:第二種特定鳥獣管理計画)
・鳥獣被害対策のための捕獲(有害鳥獣捕獲)
・趣味のための捕獲(狩猟)
だから,「生態系保全のために狩猟」だとか,「農家のために狩猟」だとか,「有害鳥獣捕獲で野生動物管理」とかいうのは目的と手段が一致していない.
ただし,それが悪いとは言い切れない(戦力に差がある,結果として似た効果があることも).
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目次
1. 前提
2. 捕獲の各種
2.1 狩猟
2.2 許可捕獲
2.3 外来生物法に基づく捕獲
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1. 前提
そもそも
日本において,哺乳類の捕獲は原則禁止(鳥獣保護管理法第8条)
ただし...以下は例外
・ルールに則った狩猟鳥獣の捕獲 ...以下 狩猟など
・許可を得た捕獲(有害鳥獣捕獲も含む) ...以下 許可捕獲
・モグラ類・ネズミ類の捕獲(鳥獣保護管理法施行規則第13条) ....今回は省略
cf. 鳥獣保護管理法施行規則第13条
https://www.env.go.jp/nature/choju/law/pdf/H26_kisoku.pdf
アライグマの場合は上記に加えて,
・外来生物法に基づく捕獲
もできる.外来生物法第12条では特定外来生物の防除には鳥獣保護管理法を適用しない,と明記されているからである.
cf. 鳥獣保護管理法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414AC0000000088#65
cf. 外来生物法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=416AC0000000078#102
2. 捕獲の各種
2.1 狩猟など
狩猟とは鳥獣保護管理法で定められた方法で狩猟鳥獣を捕獲することで,一定の条件を満たせば誰でもできる,目的を問わない捕獲(主に趣味など).
すなわち
・狩猟免許があり,
・狩猟者登録をし,
・法定猟法で,
・狩猟期間に,
・狩猟鳥獣を
捕獲すること.
-------------単語とか--------------
・狩猟者免許...住民票がある都道府県で試験に受かれば得られる免許
第一種銃(20歳以上,装薬銃と空気銃),第二種銃(20歳以上,空気銃),わな(18歳以上),網(18歳以上)の4種類
・狩猟者登録...年度ごと,都道府県ごとに「今年狩猟したい」という登録
・法定猟法...銃やわなの種類など,施行規則で定められている猟法
・狩猟期間...一般に11/15-2/15
・狩猟鳥獣...施行規則で定められている獣種
cf. 鳥獣保護管理法施行規則第13条
https://www.env.go.jp/nature/choju/law/pdf/H26_kisoku.pdf
※自由猟法による鳥獣捕獲
猟法は4種類ある.
・法定猟法...法律で「OK」とされている
・禁止猟法...法律で「NG」とされている(鳥獣のため)
・危険猟法...法律で「NG」とされている(人のため)
・自由猟法...法律で何も言われていない
自由猟法による鳥獣捕獲は正しくは「狩猟ではない」(鳥獣保護法第2条).
そのうえで,狩猟とほぼ同じルールに則れば免許がなくても捕獲ができる(鳥獣保護法第11条二イ).つまり,狩猟鳥獣とか狩猟期間とか.
例えばパチンコ(スリングショット),手づかみ,投石,斬新な新型罠とか.
まぁ狩猟については情報溢れてるし,個人的にも丁寧に書くと疲れる,ここであんまりとりあげなくてもいいか.
とりあえず,すくなくともわな免許は簡単なんで気軽にとってもいいと思う.
2.2 許可捕獲
これは主に都道府県に許可をもらっての捕獲のこと.学術捕獲や有害鳥獣捕獲,第二種特定鳥獣管理計画に基づく捕獲もここに含まれる.
たとえば,千葉県は以下のように分類している.
・学術研究の目的
・標識調査 の目的(環境省足環を装着する場合)
・鳥獣の保護に係る行政事務の遂行の目的
・傷病により保護を要する鳥獣の保護の目的
・第二種特定鳥獣管理計画に基づく数の調整の目的
・鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害の防止の目的
・博物館、動物園その他これに類する施設における展示の目的
・愛玩のための飼養の目的
・養殖している鳥類の過度の近親交配の防止の目的
・鵜飼漁業への利用の目的
・伝統的な祭礼行事等に用いる目的
・前各号に掲げるもののほか公益上の必要があると認められる目的
cf. 千葉県『千葉県鳥獣捕獲許可等取扱要領』
https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/tetsuzuki/650/documents/youryouh30kaisei.pdf
このうち,アライグマ捕獲や野生動物保護管理に深くかかわるのは,
①学術研究の目的
②第二種特定鳥獣管理計画に基づく数の調整の目的
③鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害の防止の目的
①はいわゆる学術捕獲で,研究とかの捕獲.
②はいわゆる管理捕獲で,シカとイノシシの個体数調整がメイン.カワウとかも.
③はいわゆる有害鳥獣捕獲で,農林業被害防止目的.猟友会が担うことが多い.
③有害鳥獣捕獲は従事者界隈では「有害」まで略されます.
シカ,イノシシ等の捕獲枠組みは主に
狩猟 =趣味
個体数調整 =生態系保全
有害鳥獣捕獲 =農林業被害防除
の3つの観点から語られることが多いですね.逆にこれらをごっちゃにしていると野生動物管理の議論が難しくなります.捕獲の目的と従事者が異なることもしばしば(「個体数管理のために狩猟者を増やすぞ!!」みたいな)あるので要注意.
cf. 環境省『捕獲に関する基礎知識』
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_manual/h21_03/pdf/data2.pdf
2.3 外来生物法に基づく捕獲
◎特定外来生物の防除には鳥獣保護管理法が適用されない(外来生物法第12条)
◎主務大臣以外が防除するときは,主務大臣の確認・認定が必要
・下記の『防除の確認・認定』によると,自治体の長やNPO,会社が認可を受けているっぽいね
cf. 環境省自然管理局『防除に関する基本的な事項』
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/bojooutline.html
cf. 環境省自然管理局『防除の確認・認定』
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/kakunin.html
cf. 環境省自然管理局『防除に関するQ&A』
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/qa.html
具体的には...
例えば,埼玉県で確認を受けているのは「埼玉県」のみ.(2020.5.1現在)
そして,埼玉県は『埼玉県アライグマ防除実施計画』を策定している.
cf. 埼玉県『埼玉県アライグマ防除実施計画』
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0508/gairai/documents/634726.pdf
※令和3年に改訂されたので,現在は↓になってます.だいぶボリュームアップ!!
以下の記事は改正前の防除実施計画に則っています.(2023.04.18 修正)
ここでは,「県は市町村の取り組みを手伝うよ」としたうえで,「市町村は本計画に基づいて防除を実施してね」としている.
これを踏まえて市町村は例えば以下のように計画を立てている.
http://www.city.iruma.saitama.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/010/338/boushikeikaku.pdf
※令和5年度からは↓(2023.04.18 修正)
https://as-hanno.s3.amazonaws.com/at/10745d4643500.pdf
※令和4年度からは↓(2023.04.18 修正)
...よくわからないけど,あんまり「しっかり計画立ててがっつり捕獲したろ!!」ってかんじではないのはわかった...
※おそらく当時の自分の理解不足もあったけど,これはミスリードを誘う書き方ですね...
外来生物法の防除実施計画をうけて市町村が被害防止計画を立てているわけではない.被害防止計画は鳥獣被害対策特措法関係の計画で,有害鳥獣捕獲に関する計画です.外来生物法の計画とは別.
ただ,埼玉県の防除実施計画(外来生物法)では「市町村が主体となれ」としていて,市町村は手段として有害鳥獣捕獲(特措法)を用いているので,本文は間違っているわけでもないと思う.たぶん.(2023.04.18 修正)
加えて,埼玉県は「アライグマ捕獲従事者研修会」というのをやっている.これを受けると,狩猟免許を持っていなくてもアライグマの捕獲ができるらしい.
cf. 埼玉県HP『アライグマ捕獲従事者研修会』
http://www.pref.saitama.lg.jp/a0508/araigumahokakujuujisha.html
実際に市町村でのアライグマ捕獲に関するページを見てみよう.
東松山市のアライグマ捕獲のページは主に2つの手法について書かれている.
①専門職員を呼ぶ方法
②個人で捕獲する方法
この①は外来生物法による防除のこと.先述の通り埼玉県は,「県は市町村の取り組みを手伝うよ」としたうえで,「市町村は本計画に基づいて防除を実施してね」としている.そのなかで,東松山市は専門職員による捕獲を実施しているようだ.
②は許可捕獲のうちの有害鳥獣捕獲のことを意味している.
以上を踏まえると,
・埼玉県はアライグマ捕獲の従事者を確保しようとしている(でも受け身?)
・市町村はそれを踏まえて防除を実施しようとしているけどあまり力を入れてないところもある
→埼玉県在住なら結構ハードル低く防除に参加できるものの,組織だった防除にはなっていない
ってかんじなのだろうか?
(これは制度だけ見た感想なので,「実際は違うよ」って方いたら教えてください)
では,捕獲がある程度成功している地域では?
とりあえず大山捕獲隊で有名な篠山市を確認.
cf. 大山捕獲隊活動事例
兵庫県篠山市では(兵庫県ではなく篠山市が)独自に認可を受けている.
その上で「篠山市アライグマ・ヌートリア防除実施計画」を立てている.
この計画の中身を見てみると...
細かい現状の説明や,使用罠について,捕獲個体について,モニタリングについても書いてあり,かなり充実している印象を受ける.
防除実施計画でも,自治体によって大きな開きがあることがわかる.
埼玉県のように,都道府県が大枠を定めるべきか,
それともいちから市町村が作るべきか,
わからないけども.
ちなみに,アライグマの行政的枠組み別捕獲数はこんな感じ↓
2011年と,結構古いデータだけど外来生物防除がメインなんだね.
2017年度までのデータを追加してみました.外来生物法にもとづく防除の割合増えてそうだね(2022.9.19).
最後に,比較のグラフ.
総務省資料より(2022.9.19閲覧)
ここでの鳥獣保護管理法に基づく捕獲っていうのは,有害鳥獣捕獲のことですね.
以上
2021.5.6 追記
2022.9.19 追記
2023.04.18. 修正