『第1回鳥獣の保護管理のあり方検討会』について
先日『第2回鳥獣の保護管理のあり方検討会』についてまとめたが,第1回では外来種についてもまとめられていたみたい.
ということで,今回は議事次第をレビュられている問題についてアライグマ管理について考えます.
本記事でまとめているのは一部です(半分くらい?).本記事ではアライグマや外来哺乳類の項目についてまとめますが,本検討会ではコジュケイなどの外来鳥類や愛玩目的の捕獲,狩猟免許の年齢などについても検討しています.内容については以下のレビュー参考のこと.
鳥獣の保護のあり方検討会では
第1回 狩猟鳥獣や狩猟について(2020.1)
第2回 指定管理鳥獣捕獲や認定事業者について(2020.8)
第3回 社会情勢の変化について(2020.9)
と検討する.
第1回,第2回の検討会全体のレビューについては以下を参考のこと.
cf. 『鳥獣の保護のあり方検討会(第1回)議事次第』
http://www.env.go.jp/press/files/jp/114566.pdf
cf. レビュー:環境省YouTubeLive『第2回鳥獣の保護管理のあり方検討会』
※赤字は自分の考え
※質問意見と回答は資料からの引用,近い内容の質問意見は統合しているものもあります.順番を変えている場合もあります.
環境省(2020)鳥獣の保護のあり方検討会(第1回)議事次第
以下では狩猟(登録狩猟)と外来生物法の防除の違いなどが取り上げられています.
そこらへんの整理は以下から.
cf. 狩猟?管理捕獲?有害鳥獣捕獲?-野生鳥獣捕獲の行政的枠組みの整理-
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目次
1. 登録狩猟と外来生物法の防除の折り合い
2. 法律内に外来鳥獣を別に明記すべき?
3. その他
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1. 登録狩猟と外来生物法の防除の折り合い
質問意見:狩猟による捕獲は外来生物法による計画的な防除に配慮して行うべき?(当日の資料には"外来生物法に基づく計画的な防除を実施する"とあったらしい)
回答:「管理の考え方」の趣旨として、特定外来生物であれば外来生物法に基づく防除事業を阻害しない形で狩猟鳥獣の指定の考え方を鳥獣法の中で整理しなくてはならない.
※実情として,登録狩猟が外来生物法の防除を阻害することあるのか?配慮するも何も,登録狩猟による外来種の捕獲ってそこまで多くないのでは?(下の質問意見につながるが)
質問意見:捕獲に占める狩猟の割合が 1 割以下である外来鳥獣は,狩猟における魅力,目的,価値がなくなってきているのでは?
回答:割合でみると少なくても,何千頭という単位で捕獲されているのなら狩猟が外来鳥獣の減少に貢献しているともいえる.一方で登録狩猟が外来鳥獣の防除や計画的な管理に支障を及ぼすようなことがあれば狩猟鳥獣に指定することがふさわしいか再考の必要あり.
質問意見:アライグマ,ハクビシン,ヌートリア等被害が大きい主要な外来種については根絶が目的であると思うが,現状狩猟鳥獣に指定していた効果はどの程度なのか?
被害防止目的で都道府県によっては特定外来生物に指定したうえで計画をたてながら捕獲することがメインだろう.参考資料3では,増加部分を捕獲しているくらいの効果しか生んでおらず,生態学的に個体数を増やすことに繋がっているように感じる.
回答:
・特定外来生物は非常に多種多様
・外来生物法は予算が脆弱
あらゆる手段で根絶を目指す現状.狩猟で多少でも効果があるなら,あえて狩猟鳥獣から外す必要はない.
※環境省の回答に賛成.実際,狩猟における魅力,目的,価値は小さいかもしれない.しかし,人気ないのはどうしようもない(狩猟は結局趣味)し,だからと言ってあえて狩猟鳥獣から外す理由はなかろう.
『生態学的に個体数を増やすことに繋がっているように感じる』という指摘はとても気になる.参考資料3が気になるぞ!!
中途半端に捕獲すると個体数増えることにつながりうるってこと?少なくとも日本におけるアライグマの個体群動態は全然わかっていないのでは?
生態学的には個体群は大きくなりすぎると崩壊するとされるが,シカは餌を変えるなどでなかなか崩壊せず,その前に生態系がやられるはず(洞爺湖中島の件).
アライグマの生態が全然わかっていない以上,少しずつでも捕獲を続けるべきでは?
今回の議題とは違うが,外来生物法も検討してほしい.個人的には,都道府県ごとの防除は全然進んでない気がするし.
2. 法律内に外来鳥獣を別に明記すべき?
質問意見:法律内で狩猟鳥獣,希少鳥獣と同列で外来鳥獣という項を設けて一部の外来鳥獣は場合によっては狩猟の対象としても良いとする方が読み手に混乱がないのでは.
・外来鳥獣という新たな項目として整理する
or
・現行の法律の条項の中に点々と外来生物に関わることを書き込む
どちらが容易か,読み手が分かりやすいか.
外来生物に対する国の姿勢では,第一義に外来生物法があり、ツールとして鳥獣法の様々な手段がある.
これを考慮すると,鳥獣法の中に外来鳥獣という一つの項を設ける方が分かりやすいのでは?
質問意見:これまでの狩猟鳥獣の選定は以下の視点からなされてきた.
・伝統的な狩猟の考え方
・生物多様性への配慮
・社会的経済的な観点
外来鳥獣の一部は登録狩猟で捕獲してほしいから,便宜的に狩猟獣としているだけ.
狩猟や外来生物の定義を重視して別に定義するのか?
登録すれば捕獲できる鳥獣を一つの枠で指定する便宜を考えるのか?
回答:鳥獣法の狩猟鳥獣の中に外来鳥獣が組み込まれている.それを一度整理し,それぞれ本来の管理の姿に当てはめていくということが望ましい.
鳥獣法の中に外来鳥獣という別の定義付けをしたうえで,一部は狩猟しても良いとすると複雑化するのでは.
外来鳥獣を今後どのように鳥獣法の中で管理していくかを基本指針の中で考えていくべき.
※現状,法律内で明記されている動物の区分は「希少鳥獣」「指定管理鳥獣」「狩猟鳥獣」の3つ.
指定管理鳥獣とは管理が必要な鳥獣で,シカとイノシシのこと.
この3つに「外来鳥獣」を加えるかどうかの議論.
専門家の「外来生物法のツールのひとつとして鳥獣法があるなら,項目設ける方が自然」って意見はその通りだと思う.
でも環境省の「複雑化するのでは?」という指摘もわかる.
そのうえで,私は項目を別定義した方がいいと思う.
・狩猟者は外来鳥獣に関して既に理解があるはず(なけりゃ免許合格させちゃダメっしょ)
・「指定管理鳥獣」も複雑だと思うけど,必要だから設置した
あとは,回答では「外来鳥獣の一部は狩猟して良い」とあるが,外来鳥獣全て狩猟して良いにしちゃだめなのか?
3. その他
質問意見:狩猟捕獲される個体よりもはるかに多い数が有害鳥獣捕獲や外来生物法で捕獲されている.果たして登録狩猟に効果を期待できるのか?外来鳥獣を鳥獣法の中で規定し,登録狩猟の対象とすることもできるというのが当面の整理では?
質問意見:登録狩猟であっても,外来鳥獣に捕獲報奨金が設定されていることにより狩猟数が押し上げられている.位置づけとしては有害捕獲と同意であるため,その点を考慮して狩猟による捕獲数を評価した方が良い.
※2つ目の質問意見は自分の中に抜けていた.なるほどな...
以上