環境省YouTubeLive
『第2回鳥獣の保護管理のあり方検討会』
2020.8.24 14:00-16:00
のレビューです.
cf.環境省HP 報道発表資料
http://www.env.go.jp/press/108289.html
2014年の鳥獣保護管理法改正でどう変わったのか?今後どうしていくのか?
施行状況や新たな課題などを検討するもの.
今回は第2回.9月に第3回をやります.
本ブログはアライグマの管理に関するものではあるが,国の野生動物管理のトレンドを捉えることは重要だと思うのでとりあげます.
環境省職員が現状と課題,対策案を説明し,
委員(専門家)が意見,質問,
環境省がそれに応じるという形式.
※注意
・Live聞きながら書きなぐったメモなので正確性は保証できません.
・発言者名は明記してません.
・今日の記事はアライグマ自体は関係ありません.
・赤文字は私自身の補足と意見です.環境省や検討会の意見とは関係ありません.
cf. 第1回のまとめ
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目次
1. 指定管理鳥獣制度の課題と対応方針
2. 指定管理鳥獣捕獲等事業制度の課題と対応方針
3. 認定鳥獣捕獲等事業者制度の課題と対応方針
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1. 指定管理鳥獣制度の課題と対応方針
cf. 参考資料
http://www.env.go.jp/press/files/jp/114562.pdf
これは「多すぎる鳥獣の管理」に関する制度の話.
従来は希少鳥獣の保護を行っていた.先の改正では,増えすぎた野生動物の管理を目的として指定管理鳥獣捕獲について定めた.
シカ,イノシシを指定管理鳥獣として指定し,その捕獲事業に力を入れている.
例えば具体的には,2023年までにシカ・イノシシの個体数を2011年に比べて半減することを目標としている.
◎現状と課題,認識
→ニホンジカで特に捕獲強化が必要
・個体数は両種とも減少.
・捕獲数は横ばい.
・被害額は減少.
・ニホンザルとカワウも追加指定を求める声も.
→サルとカワウは群れを下手に捕獲すると群れが分裂して被害が広まる可能性がある.その他以下のような問題もある.
ニホンザル:加害個体群の判断などが大事.
カワウ:長距離移動するので,適切な繁殖抑制や捕獲等の方法について最新の知見が必要.
→以上を含め,追加指定はしない方針.
※被害額減少の要因のひとつに,そもそもの農地面積の減少もあるといわれる.
※サルは老メスザルが統率している.サル捕獲時にこの老メスザルを獲ると群れの統率がとれなくなり分裂する.こうなると逆に被害が拡大することがある.カワウのコロニーを下手に撃つと逃げてしまい,むしろ被害が拡大することがある.これらは専門的な捕獲技術が必要だったりするらしい.カワウの話は琵琶湖の件が有名なのでCheck it out.
cf. 環境省(2013)『カワウの保護管理に関するレポート(平成24年度版)』
https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-report/h24report_kawau.pdf
◎質問・意見
意見①:サルの捕獲数が増えている.捕獲過剰な地域もある.適切な管理について検討が必要.被害が拡大するなど既に問題が生じているので,専門家ヒアリングをすすめてほしい.
意見②:サルとカワウの追加指定について.指定管理鳥獣に指定することで予算がついたり,管理手法について検討できたりする.「むやみな捕獲では問題がある」と「指定しない」は必ずしも結ばれないのではないか.
意見③:目標達成の有無だけでなく,目標達成してない都道府県は原因を精査すべき.捕獲努力量が減った?狩猟者が減った?など.
→環境省で原因精査する方法のガイドラインを作成している.
意見④:捕獲の量的評価だけではなく質的評価も必要.
→国が目標設定や評価などを都道府県に放り投げないのが大事.協力してやっていきたい.
※同じ捕獲数でも,幼獣を獲ったのか成獣を獲ったのかで管理の効果は違う.母となるメスを獲ったのかオスを獲ったのかで管理の効果は違う.数(量)だけではなく,どういう個体を捕獲するか(質)も管理には重要.
意見⑤:半減目標は暫定目標.半減のあとも考えなきゃいけない.このあとシカとイノシシのどっちに軸足を置くかも決めるべき.シカの方が重要性が高いのでは.
→総論としてはシカの捕獲に力を入れるべき.ただし,地域によっては豚熱のあるので一概には言えない.
※明らかにシカの方がヤバいらしい.そんなに違うものなのか...「どっちを重要視するべきか」も考えなきゃいけないとは思わなかったな...
質問①:指定管理鳥獣に指定したことで効果はあるのか?
→効果は都道府県によって違う.例えば,「捕獲困難地域での捕獲が進む」「計画を策定→実施→評価の流れができた」などの効果がみられる.
※趣味の狩猟による捕獲圧では「獲りづらい地域」での捕獲は望めない.急斜面や入りにくい地域での捕獲は特に専門業者が必要だったりする.
2. 指定管理鳥獣捕獲等事業制度の課題と対応方針
cf. 参考資料
http://www.env.go.jp/press/files/jp/114567.pdf
指定管理鳥獣捕獲等事業実施計画とは,第二種特定鳥獣管理計画の目標達成のために定める計画.第二種特定鳥獣管理計画の下位計画.
許可や捕獲個体の放置,夜間銃猟などの制限を緩和することができる.
※第二種特定鳥獣管理計画とは,野生動物管理のための鳥獣捕獲について定めた計画.都道府県ごとに定める.
※一般に捕獲個体の放置や夜間発砲は禁じられている.
◎現状と課題,認識
・放置:1県1事業,国1事業
夜間銃猟:3都道府県,近年は和歌山県1県
・指定管理鳥獣捕獲等事業実施計画がどのように第二種特定鳥獣管理計画に寄与しているかが不明確.
・捕獲の数だけでなく質的な評価も必要だが,評価手法が確立してない.
→評価方法のマニュアル
・広域連携を目標としているが,県境での連携した捕獲の実績が少ない
・交付金についても情報共有や会計時期に問題(捕獲しやすい3-4月に年度が変わってしまう)
→情報共有の強化や会計時期の柔軟な対応など
※質的評価のマニュアル作るとあるが,そもそも質的評価の手法は確立されているのか?
◎質問・意見
意見①:広域連携について,「国が参画する」とあるが国は具体的にどういうことができるの?県境またいで質的にどういう捕獲する?成果報告会だけではだめ.動物は行政区画を超える.専門家を入れて方向性を定めてほしい.
意見②:広域連携といっても捕獲隊は小規模で局所的.その積み重ねが管理の成果になる.そういったなかで協議会は何ができる?どう対応していく?そこを詰めていくべき.
→実際,「広域協議会」は何をやるのかが不明確だとただの負担になってしまう.
意見③:広域連携といっても人材などリソースは都道府県ごとだったりする.そういうものを環境省がリードして統合しなくては.トップダウンも必要.
意見④:放置や夜間銃猟の評価や手続き改善なども現状の評価だけでなく,将来的な対策を見据えたことをしなくては.
質問①:「3-4月の予算問題はスケジュールを調整する」とあるが具体的には?
→報告書提出期限がキツキツで次期計画に反映しにくい.その提出期限を調整する.
質問②:放置や夜間銃猟の規制緩和,活用されていないのはなぜ?
→放置:生態系への影響評価がなかなか進んでいない.
夜間銃猟:昼でも十分できるところが多い,手続き煩雑
特例として認めているだけで,積極的に推進していくものではない.
質問③:野生動物管理は単年度で評価できるものではない.都道府県で複数年計画を策定しているところはある?
→基本単年度.1都道府県が1計画だけあるが...
制度的に策定は可能.
※自分も「広域連携って大事だよな,動物は県境気にしないし...」と漠然と考えていたが,具体的にどうするかはむつかしいな... 捕獲隊は数人-十数人だから捕獲隊同士が連携するわけでもない.かといって,捕獲数報告しあうだけだと意味がない.広域連携って何すればいいんだろう...捕獲圧の調整とか?なんか意見ある人コメントください笑
3. 認定鳥獣捕獲等事業者制度の課題と対応方針
cf. 参考資料
http://www.env.go.jp/press/files/jp/114564.pdf
認定鳥獣捕獲等事業者は第二種特定鳥獣管理計画を進めるうえで捕獲などを担うプロ集団.
将来的には鳥獣の生息状況の調査や計画策定,モニタリング及び評価等にも関与する等,地域の鳥獣の管理の担い手となること目指している(資料より引用).
cf. 環境省HP『認定鳥獣捕獲等事業者の趣旨』
https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/about.html
◎現状と課題,認識
・都道府県ごとに認定し,毎年増加傾向.現在,147業者.
・認定の状況は地域の偏りなどがある.
・県外認定事業者も使えるが,実際は県外の業者の情報収集が困難なので使いづらい.
・捕獲以外の評価基準が必要だが,足りてない
・シャープシューティングなどの技術も評価したい.
・技術評価などは認定時のみ
→技術の定期的なモニタリング・チェックが必要.
※シャープシューティングとは群れごとシカなどを捕獲する専門的な手法.
餌と爆音機を設置.誘引と同時に爆音で逃げないようにする.こうすることで1頭撃たれても音で逃げることはないので,餌場に来た群れを全頭捕獲することができる.
スレた個体を生まない手法.すごい.
cf. シャープシューティングとモバイルカリング
https://www.env.go.jp/nature/choju/capture/pdf/b1.pdf
https://www.maff.go.jp/form/pdf/4_chapter2.pdf
◎質問・意見
意見①:結構抽象的な文言が多いが,具体的に進めなくては時間がない.
質問①:147事業者のうち,実際に受託した業者(機能している業者)はどれくらい?
→環境省は現在把握していない.
意見②:少子高齢化でハンター減少.これからはプロ集団を増やす必要がある.そのうえで,この認定捕獲等事業者がどれだけ機能しているか評価する必要がある.拡充していくならどれくらいスケジュールでやるのか?捕獲だけではなく,安全なのか?成果の評価できる事業なのか?も認定基準に.
意見③:「地域によって偏っている」とあったが,動物分布は偏りがあるものなのでそのもの自体は問題でない可能性もある.数が足りていないのか,質が足りていないのか,問題ないのか,しっかり評価していく必要がある.
意見④:147事業者について調査していく必要がある.その調査によって今後の方向性を決めるべきでは.
→3年で更新をする.10事業者程度入れ替わりしつつ,傾向として増加しつつ.
※噂で認定鳥獣捕獲等事業者の認定は形骸化しているって聞いた.実際,今回の質疑応答ではそこが指摘されていた気がする.「鳥獣の生息状況の調査や計画策定,モニタリング及び評価等にも関与する等,地域の鳥獣の管理の担い手」が最終的なゴール.現在の認定では捕獲以外の点はどこまで評価できているのかが複数人から指摘されていた.技術の評価も認定の最初だけ?っていうのは意外だった.更新時に評価できればいいとは思うが...
動物を獲る者でも,趣味の狩猟を行うHunterと管理捕獲を担うCullerでは別物.認定を進めるのも重要だが,ガチプロの育成にも力を入れてほしい.
第3回検討会ではアーバンアニマル(都心に出没するシカやイノシシ)や錯誤捕獲の話などが取り上げられるらしい!!楽しみ.
以上.