外来生物法改正で何が変わる?-アライグマ防除の視点から-
外来生物法改正で何が変わる?-アライグマ防除の視点から-
その一部改正案が2022年3月1日に公表された.
2013年に一部改正されてから5年以上たったので,近年の状況を鑑みたそう.
今回は,特にアライグマ防除の観点からこの外来生物法改正案を読んでみた.
以下は,その所感の備忘録です.
※筆者は制度や法律のプロではないので,間違っていることが多々あるかも!!
是非ご自分で元資料にあたってください.
※本文の主務大臣を本ブログでは国とか環境省とか表現しているかもです.正確ではないけど,本質は違わないよね…?
#赤字 は個人の感想です.
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目的
1. 改正法律案の概要
2. 改正の内容
2.1 各位の責務とそれぞれによる防除
2.2 捕獲従事者とかが調査のために民有地に立ち入る許可がおりるようになるかも!?
2.3 外来生物の防除は適切な方法で
2.4 鳥獣保護管理法との整合
2.5 予防せよ!!
2.6 新カテゴリー『要緊急対処特定外来生物』を制定
2.7 その他
3. 感想
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1. 改正法律案の概要
改正法律案の大きな特徴は以下の3点
①ヒアリ対策の強化
②アメザリ・アカミミの規制手法の整備
③各主体による防除の円滑化
①のヒアリは,日本では2017年に侵入が確認.前回の2013年改正後の外来種界隈で大きな話題トップクラスの大きな話題でしたね.②ザリガニなどに関しては2020-2021年に大きな話題に.アメザリ以外の外来ザリガニが特定外来生物になったんですよね,たしか.
でも,ヒアリもザリガニ,カメも気になるけど,私が不勉強なのもあり,今回はアライグマに特化した備忘録・話題提供にします.
現行の外来生物法では,防除(イメージ的には”捕獲主体の対策”)を行う主体は国.
しかし,地方公共団体も知見が蓄積されていて,知見の蓄積と防除の主体が食い違った状態.そのため,地域での防除や地域間の連携などに支障があるらしい.そこで,国、都道府県、市町村、事業者及び国民に関する責務規定を創設することで役割分担をする.
たとえば,現在では都道府県が防除を行う際は国に”確認”(≒申請)が必要だが,それが不要になる(詳細は後程).
2. 改正の内容
2.1 各位の責務とそれぞれによる防除
現行法では,特に誰が何をする責任があるかについては示されていない.
そこで,改正案では国,地方公共団体(都道府県・市町村),事業者・国民のそれぞれに責務を定めた.
そして,現行法では防除の主体は国で,地方自治体は国に「確認」(≒申請)する形で都道府県や市町村が独自に対応することはできない.
改正案では,それぞれ協力しつつ都道府県は独自に防除を実施できるみたい.
国:
責務
総合的に対策せよ
まだ未定着・局所的な外来生物に対応せよ
地方公共団体や事業者・国民の活動を促進せよ
防除
現行法の被害が生じている・生じそうな場合に加えて,
未定着・局所分布な場合も防除の実施が可能に.
#上記ホットスポットとは,正式には「生物の多様性の確保上重要と認められる地域」.国立公園とかのことかな? 改正案では,地方自治体の役割も明記されているので,「特に頑張んなきゃいけないところは国もやるよ」っていう役割分担かな?
責務
被害の発生状況や動向などを踏まえて,被害防止のために対応せよ
防除
現行法では国に確認(≒申請)が必要だが,改正案では都道府県は独立して防除が可能に.
市町村は確認(≒申請)が必要っぽい.
基本的に既に定着している外来生物の防除を担う.
#おそらく今までは「被害が出ているんだったら環境省に言って防除していいよ」ってニュアンスだったのかな?それが.「各自防除する責務がある,それぞれ能動的に防除せよ」っていう強いニュアンスに変わったのだろうか.
事業者・国民:
責務
適切に理解し,適切に取り扱うように.
国や地方公共団体に協力せよ.
外来生物法改正案に伴い,物流途中で検査とか入るかもしれないけど配慮せよ(?)
#ここはかなり意訳.原文「物品の輸入、輸送又は保管を他人に請け負わせる者は、当該者から物品の輸入、輸送又は保管を請け負った事業者がこの法律及びこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をするものとする。」.意訳が間違っている可能性大きいので,ここは引用とかしないでください(汗)
防除
現行法では国に認定(≒申請と受理)が必要.地方公共団体と近い扱い.しかし,改正案では都道府県が独自で防除実施できる等の変更があったため,こちらも別途明記.
ただし,内容自体に大きな変更はないで,国に認定してもらうことが必要みたい.
2.2 捕獲従事者とかが調査のために民有地に立ち入る許可がおりるようになるかも!?
(2022.03.15修正)
現行法において,捕獲・調査のために民有地等に入ることができるのは環境大臣が指示した環境省の職員職員&委任された者のみ(もちろん必要限度).(2022.07.01修正)
それが,改正案では環境省大臣だけではなく,防除を行う地方公共団体の長も立ち入り許可を与えることができるようになった.
ただし,地方公共団体については調査はNGで,防除のみ.(2022.07.01修正)
#「環境大臣が指示した」を追記.権限を持っているのが主務大臣であって,その権限の行使ができるのは「職員または委任した者」でした…すみません.(2022.07.01修正)
#初稿・第二稿では,改正内容を「権利行使者を委任した者に拡張した点」としましたが,そこは変わっていませんでした.改正内容は「許可出せるのが大臣から地方自治体の長に拡張された点」です.全然違うこと書いてた…(2022.07.01修正)
それが,改正案では「委任した者」も立ち入ることができるようになる.もちろん,必要限度において,身分証の提示とかは必要だけど.
また,現行法では捕獲・放獣のためでないと立ち入りができなかったが,改正案では調査目的の立ち入りも可能になる.
#委任した者とは誰を指すのだろう?国が調査機関に依頼するという形かな?
初稿では「捕獲従事者」と書いたけど,これは不正確でした.訂正します.
(2022.03.15修正)
#委任した者云々は新設ではなく,現行のままです.取り消し線で消した旧原稿は全部的外れ...(202207.01修正)
2.3 外来生物の防除は適切な方法で
現行法では特に防除の方法については何も規定されていないかった.
改正案では,鳥獣保護管理法などの規定を遵守した適切な方法を用いることが求められる.
#おそらく,殺処分方法を苦痛のないやり方で…ってことだと思う.あとは後述の危険猟法とかのことかな.
2.4 鳥獣保護管理法との整合
現行法では,外来生物法による防除(≒捕獲)の場合は鳥獣保護管理法の例外とされている.
改正案では,「限定的」に例外とする.すなわち,鳥獣保護管理法の一部は守る必要がある.例えば…
指定猟法禁止区域,特定猟具禁止区域,危険猟法,夜間や住宅地での銃猟
の規定は許可を得ない限り順守する必要がある.
#そうか…今までは外来生物の防除のためだったら危険猟法や夜間発砲とかも可能だったのかな…?
2.5 予防せよ!!
現行法では,被害がある・ありそうなときに対応する形.
改正案では,未定着・局所的であってもあらかじめ蔓延防止や予防的に対応することが定められる.
#外来種対策は早期対策や予防原則が大事だとされるけど,現行法では被害対策の色が強い.それが改正されて予防対策できるようになるのはアツい!!
2.6 新カテゴリー『要緊急対処特定外来生物』を制定
そもそも…
「外来種」とは,「人為的な導入により本来の生息地の外に生息・生育する生物」.国内由来のものも含まれる(国内外来種).
そのなかで,明治元年以降に導入された国外外来種を外来生物法では「外来生物」と呼ぶ(法律用語…って言っていいのかな?).
その「外来生物」のうち,生態系等に被害を及ぼすものを「特定外来生物」として指定している.特定外来生物はアライグマとかマングースとかキョンとか色々.
その改正案では,「外来生物」の中で,「蔓延したらめっちゃやばくて国民生活の安定に影響があるかもしれなくて,その対応を緊急に実施しないといけない(意訳)」ものを「要緊急対処特定外来生物」として定める.
そして,その要緊急対処特定外来生物がいる(存在・付着・混入)している可能性が高い場合には,該当する物・場所を強制検査させたり,とりあげたり(無償で集取)できる.
そして所有者に報告を求めることができる.
#詰めるってことかな?「おい,動くな!!手に持っているものを置け!!検査させてもらう!!没収だ!!」とかみたいなことができるのかも.違ったらすみません.
しかも,こういった対応は「国-要緊急対処特定外来生物を所持している人」だけにとどまらない.空港の管理している事業者とかに対しても拡散防止など措置の指針を指定するらしい.で,その事業者とかが環境省・国交省の言うこと(助言)を聞かないと怒られる(勧告,命令)らしい.
#もしかしてかなり強い対応なのでは…??
2.7 その他
現行法では,科学的知見の収集とかを推進するよう努めよとのこと.
改正案では,推進せよと変更.努力義務から義務に変更っぽい.
現行法では国内の対応にのみ言及しているが,
改正案では国際協力の推進を努力義務として明記.
現行法では,防除(≒捕獲とか)に対する国民の理解推進を国が行うものとしている.
改正案では
・防除だけでなく外来生物そのものに対して
・国だけでなく地方公共団体も
国民の理解推進を担う.
現行法では関連省庁との協力について何も言及していなかったが,
改正案では関連省庁との協力を明記.
3. 感想
全体的に積極的な体制になった印象.
国がメインから,都道府県単位での防除も可能になったし,
それぞれの責務を定めたのも「防除は国だけではなくみんながやるもの」という方向性になったのかもしれない.
また,未定着種や局所分布に対しても対応ができるようになり,予防原則の適用が可能になったのも期待大.
科学もより重視されているし,国際協力も推進されている.
加えて,現行法の穴も塞がれた感じがする.
たとえば,危険猟法や殺処分方法などの防除の上でも必要な考え方が改めて担保された.
立ち入り許可も環境省職員だけでなく,現場の従事者にもおりるようになりそう.
より積極的・現実的になりそうな法改正に期待します.
これで外来生物対策が進むといいな.
(国内外来種に関しては依然対策はされないのかな…)
※国内由来の外来種については,生態系被害防止外来種リストとしてまとめており,対策の進展を図っている.(2023.4.18 修正)
以上
2022.03.14 執筆
2022.03.15 修正
2022.07.01 修正
2023.04.18 修正