アライグマ備忘録

アライグマに関するメモです.コメントとかで議論出来ても面白いかもね.アライグマについて詳しく知りたいな~っていう人向けです.

レビュー:『兵庫県における外来哺乳類の現状と課題』 4章 住民主体によるアライグマ捕獲隊の活動事例~大山捕獲隊の活動記録~

兵庫県森林動物センター刊行兵庫県ワイルドライフモノグラフ12号

兵庫県における外来哺乳類の現状と課題』のレビューです.赤字は私の見解等メモです.

本編はこちらから↓

http://www.wmi-hyogo.jp/publication/monograph.html

 

野生動物管理の最大戦力(さとやまん調べ)たる兵庫県森林動物センターによるアライグマ対策の数少ない成功例報告です. 地域住民主体の対策隊の活動報告.内容として,特に珍しい取り組みをしているわけではないのに成功していた.

鍵は「住民主体」と「官民学の三位一体」ってところでしょう.住民自ら対策しようとしているところ.それをしっかり行政と学識者がフォローできているというところ.

住民主体なら他の地域もやってそうだけど......

どうやったら他の地域がまねできるのかが気になる.

 

個人的には兵庫森林動物センターのバックアップも大きかったのかなと思う.「自分たちで対策したい!!」ってなったとき,そのやり方を分かっている人がいるのは大事.どう対策すればいいか,どうやって資金集めればいいか,どうやって行政に働きかけたらいいか(今回は行政の制度整備の方が先)といったところを指揮とれる存在がいたのが成功の鍵なのではないか.

阿部(2011)は,農家主体だと被害が軽減したときにモチベーションが低下するのが課題であると指摘した.現在一定まで密度を抑えられており,また錯誤捕獲の方が多い状態の大山はこれからもずっと捕獲圧をかけ続けられるのか?できるとすれば,それはどうしてか?っていうのが気になった.

阿部(2011)の該当レビューはコチラ↓

https://satoyaman-raccoon.hatenablog.com/entry/2020/04/14/%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC%3A%E3%80%8E%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%A4%96%E6%9D%A5%E5%93%BA%E4%B9%B3%E9%A1%9E%E3%80%8F5%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%9E-%E6%9C%89

 

 

 

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◎摘要

丹波篠山市大山地区では地域住民主体の『大山捕獲隊』が結成(2011)

・行政も支援,隊員以外も参加

・現在では他地域への支援,空き家対策なども行っている

 

 

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◎経緯

(1. はじめに/2. 大山捕獲隊設立の経緯/3. 丹波篠山市の取り組み)

・『篠山市アライグマ・ヌートリア防除実施計画』策定

①わな猟免許非所持者も講習を受けると捕獲従事者として登録可

②処分はクリーンセンターにて行える(生体輸送可)

※①はしばしばみかける制度だけど,②の処分を自分でしなくていいっていうのは大きいね.野生動物の捕獲・駆除はその処理がなかなかにハードルになるから.②の整備されている計画はどれくらいあるのだろう?

 

・2010年-学術研究捕獲の際に,地域住民から協力を得る

→捕獲の共同作業体制が確立

→住民「捕獲技術身に着けたい」

→任意団体 大山捕獲隊

 

・結成14名,総務省から助成(行政と民間が連携した地域活動として117万円)

目的:「外来生物アライグマの排除と地域の安心安全を自らの力で守る活動を継続していく」

2012年にNPO法人

 

◎捕獲体制(4. 捕獲基盤の整備/5. 捕獲の5原則)

・捕獲基盤の整備

①合意に基づく活動方針の明確化

②捕獲機器類の整備や維持管理の体制の整備

 

・捕獲の5原則をまとめ,共有

①連絡体制整備/準備/協力者確保

②情報収集と痕跡認識,餌による誘引実験

③わなの設置のコツ

④わな見回りは毎日

⑤1週間捕獲なければ移動

※⑤が思ったよりシビアな基準だった.アライグマ捕獲までかかる平均日数(後述)も結構短い.

 

◎捕獲状況(6. アライグマの捕獲状況/7. 錯誤捕獲への対応)

・当初はクリーンセンター持ち込み→電殺器取り扱い講習

 

・錯誤捕獲はめちゃくちゃ多い(イタチとカラスが多い)

ヌートリア以外は放獣

→のちに有害鳥獣捕獲申請してハクビシンとカラスも捕獲

 

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図1. 箱罠によるアライグマの捕獲数と錯誤捕獲数及びアライグマの捕獲効率(捕獲数/100わな日)http://www.wmi-hyogo.jp/publication/monograph.html

 ※11-12月で再び上がっているのが気になるね.あと,1月からの上がり具合がすごい.

※錯誤捕獲もかなり多いね.アライグマの倍くらい獲れている.イタチ類が多いとのことだったけど,東日本だとタヌキになるのかな?タヌキやネコがいる地域だと難しそう.特に農業的な有害鳥獣ってわけでもないし...

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図2. 大山捕獲隊のアライグマの年度別・地区別捕獲数 http://www.wmi-hyogo.jp/upload/database/DA00000595.pdf

※大山地区は年間40頭から今は年間15頭くらいに抑えられている.低密度管理になってるのかな?少なくとも増加は抑えられてそうだな.個体数推定もいいけど,こういう捕獲数動向を見て傾向をつかむのも大事だね.

 

・2010年度-2019年12月までの9年9ヵ月で262頭捕獲 

・アライグマ捕獲数,錯誤捕獲数,錯誤捕獲種数はいずれも7月に最多

・水辺で110頭,宅地108頭捕獲

・設置から捕獲までの平均日数はメス:5.9日,オス:4.8日

※思ったより宅地での捕獲が多い!!

 

◎その他特徴

・地域住民が自ら問題意識をもってとりくんでいる

・活動を可視化...殺処分とかもあわせて公に

・広報活動しっかり

・地域住民×学識者×行政で取り組む

※他の地域に比べて,どこが優れていたんだろう?他の地域よりも主体的な自衛意識があった?他の地域よりバックアップが厚かった?どうすれば他の地域はこのシステムを輸入できる??

 

◎附録

 

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図3. アライグマの捕獲適期 http://www.wmi-hyogo.jp/upload/database/DA00000597.pdf

・↑は4章のあとの附録より引用.

※これが現時点でのアライグマ捕獲時期の解みたい.

※有害鳥獣捕獲......被害の多い7月~

    狩猟              ......狩猟期間11月-2月

というのはどちらも適切ではないね.やはり,捕獲隊や計画捕獲でがっつり3月あたりから捕獲するとか,有害鳥獣捕獲で被害が多い時期の前々から捕獲するとかが必要.

 

 

以上