レビュー:北海道アライグマ防除実施計画
レビュー
北海道アライグマ・カニクイアライグマ(以下アライグマ等)防除実施計画書
北海道アライグマ防除技術指針
北海道のアライグマ防除計画についてです.アライグマ対策といったら北海道ですよね.ということで,個人的に防除が充実してそうな印象がある北海道の防除実施計画をチェックしました.
個人的には,『北海道アライグマ防除技術指針』はアライグマ捕獲におけるバイブルですね!!捕まえる罠から,設置方法,輸送方法,処分方法まで細かく載っているので,必見です.
本文
北海道アライグマ・カニクイアライグマ(以下アライグマ等)防除実施計画書
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/araiguma280428.pdf
北海道アライグマ防除技術指針
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/grp/01/araigumasisinn.pdf
cf. そもそも防除とは?根拠法は?有害とかとの違いは?
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目次
1. 防除実施計画関連で見つけた2つの資料
2. 北海道アライグマ・カニクイアライグマ(以下アライグマ等)防除実施計画書
3. 北海道アライグマ防除技術指針
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1. 防除実施計画関連で見つけた2つの資料
軽く調べてみて出てきた資料は以下の2つ
①北海道アライグマ・カニクイアライグマ(以下アライグマ等)防除実施計画書
②北海道アライグマ防除技術指針
どうやら,基本となる計画として①があり,その中の「防除の方法」の補足として②がある,という構図みたい.①が13P,②が16Pあり,合計29Pというなかなかの分量である(兵庫篠山市13P,東京都6P,埼玉県20P,神奈川県43P,千葉県19P).
2. 北海道アライグマ・カニクイアライグマ(以下アライグマ等)防除実施計画書
全13ページ
防除の目標を長期として完全排除,短期として被害低減と生息域拡大阻止を掲げている.
防除の方法としては箱罠に加え,エッグトラップ,巣箱型箱罠を記している.
cf. エッグトラップについて
cf. 巣箱型箱罠
誘引餌の一覧や見回りについても言及されています.
さすがだ...ほかの自治体でも捕獲方法をここまで細かく書いてはない.(餌とか罠については別途対策マニュアル定めている自治体もあるみたいだけど...正直追い切れん)
被害数や捕獲数も数値で明示してある.
ただ,防除の主体がわからないなぁとは思った.
埼玉県とかは「メインは市町村でやってね」とあるけど,北海道は防除技術指針で援助については触れているのの具体的な防除のプロット?とか指揮系統とかは見えにくい気がした.防除計画書に書くものではないのかな?
3. 北海道アライグマ防除技術指針
全16ページ
ぶっちゃけめちゃくちゃわかりやすくて,詳細な防除のバイブルですな
立ち位置としては,"防除実施計画の「防除の方法」を具体的に明らかにする"とのこと.
各地の分布状況や捕獲数(図1)を把握しており,対策としては以下を明示.
・市町村担当者向けの研修会
・箱罠を市町村に貸出
・鳥獣被害防止特措法に基づく支援
・交付金
でも分布とかの情報は古いな...
しかも,技術について,罠の構造から設置方法,捕獲個体の収容方法,ガス殺方法につついて明細が書かれている.
具体的には
①エッグトラップによる捕獲仕様書
・エッグトラップとは
・利点
①アライグマ以外の動物の混獲を防止
② 小動物による餌の持ち逃げや誤作動率を軽減
③ 箱ワナに対するトラップシャイ(警戒心の強い)個体の捕獲
④ 力の強い個体によるワナの破壊や逃亡の阻止
⑤ ワナの購入・運搬・管理に係るコストの削減
⑥ 設置環境の選択性が高い→水辺や湿地などにも設置が可能
・設置方法や場所の選定
・回収箱
・その他行政で使うための留意点
cf. エッグトラップとかについては
この回収箱って,暗いところに入る習性を活かしたもの.
cf. EggTrapで捕獲されたアライグマを回収するための誘導型捕獲箱の開発(阿部ほか, 2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/51/2/51_2_257/_article/-char/ja/
②ガス殺仕様書
・使用機材を写真付きで詳細に説明
・箱の大きさを考慮した流量も記載
・手順も丁寧に記載
・かかる費用も記載
また,計算方法などもしてくれてる.
③除去法による生息頭数の試算
これは「ある閉鎖個体群において,連続的に捕獲した時の捕獲頭数と,対応する捕獲努力量のデータをモデルに適用することで,捕獲開始直前の個体数を推定する方法」(浅田2014)
この手法を用いていくつかの地点で生息頭数を試算.
そこのCPUE(捕獲努力量当たりの捕獲数)と,周囲(頭数試算してない)のCPUEを比較することで生息密度をメッシュ状に示せるよ,という話.
cf. 浅田 2014 階層ベイズモデルを使った除去法によるアライグマの個体数推定
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/54/2/54_207/_article/-char/ja/
④効率的な捕獲時期
従来は被害に対処するかんじで捕獲していた.
でも,捕獲効率とか齢別の捕獲状況とかみる春の方がいいよ(6月)とのこと.
これも先行研究と一致した見解.
以上