【寄稿】アライグマによる両生類被害について(づまささん)
【寄稿】アライグマによる両生類被害について
今回は初の寄稿回です!!
アライグマについて,もっとまとめるべき内容がたくさんあるのに実力が追い付いていない私,さとやまんですが,
今回は両生類に明るいづまささんにアライグマの両生類に対する影響について寄稿していただきました!!
づまささん (@wildanimalphoto) / Twitter
づまささんは関西でカエルとアライグマについて調べていた方です.
では,さっそく両生類被害についてご説明いただきましょう!!
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この度アライグマ備忘録に寄稿することになりましたづまさ(@wildanimalphoto)です。私は関西の某県でアライグマと水田のカエルを対象にした研究をしていました。今回はその研究の過程で調べたアライグマが日本の在来両生類の捕食被害をまとめたので、皆さんと共有しようと思います。
両生類について簡単な説明をします。両生類は生活史のなかで陸域と水域の両方を利用する脊椎動物です。現在、日本在来のサンショウウオとカエルは合計95種生息しています。その数はどんどん(サンショウウオの再分類が進んでいるため)増加しています。
cf. 日本爬虫両棲類学会 (2021) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2021年4月22日版) http://herpetology.jp/wamei/index_j.php, 2021年9月23日確認
しかし、外来種であるアライグマが個体数増加・分布拡大に伴って、両生類に対する捕食被害が報告されるようになりました(表1)。中にはアライグマによる捕食が確定していないものも含まれていますが、状況証拠的にアライグマの関与が強く疑われるものを表1にまとめています。
cf. 栗山・沼田(2020)兵庫県神戸市におけるニホンアカガエル繁殖期に出没・カエルを捕食したアライグマの記録
http://www.wmi-hyogo.jp/upload/database/DA00000594.pdf
cf. 栗山・沼田(2020)のレビュー
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
今のところ、サンショウウオ類は5種、カエル類は11種に食痕や消化管から確認された事例が報告されています。この中で特筆すべきものとして、伊原他2014の報告を取り上げます。
伊原他2014では、福島県でのモリアオガエル大量死を報告しています。本報告では、主に水田の水路に222個体のモリアオガエルの死体があったと報告しています(図1)。
cf. 伊原他(2014)福島県只見町で発生 したモリアオガエルの大量死につ い て
その死体には、体表面の創傷、眼球の突出、腹部の膨張が確認されており、その要因として肉食動物による咬傷と判断されました。最後の考察では、既出の報告である金田・加藤2011の中に三浦半島の葉山町でアライグマが多くのヤマアカガエルを襲い殺害したうえで、食べずに放棄したことを例に挙げ、福島県での事例と酷似しているため、アライグマの関与が強く疑われると記述されていました。
このように、散発的ではありますが、アライグマによる両生類への捕食被害は発生しており、中にはモリアオガエルやヤマアカガエルの大量死が報告されています。今後も捕食被害報告(疑い含む)を積み重ねていくことが重要であると感じます。また、両生類に対するアライグマの影響を量的に明らかにしていくことも重要です。
アライグマ備忘録を閲覧されている読者の方には、是非自分のフィールドで不自然な怪我をした両生類を片手間でいいので探してもらい、短報として報告するかしかるべき研究機関に情報を提供していただければ幸いです。
質問等あれば、
kankyou.wolf☆gmail.com(☆を@に変えて)
までお願いします
(文責:づまさ)
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ありがとうございました!!
>両生類に対するアライグマの影響を量的に明らかにしていくことも重要
本当にその通りだと思いました.捕食事例があっても,それがどれくらいクリティカルな被害なのか定量評価した報告はあまりない印象です.
ただ,現場ではやはりかなり影響がある印象が強いようで.
報告が待たれます.自分も探してみたいなぁ...
以上.
2021.9.25.執筆