アライグマ備忘録

アライグマに関するメモです.コメントとかで議論出来ても面白いかもね.アライグマについて詳しく知りたいな~っていう人向けです.

レビュー:野幌森林公園地域におけるアライグマの行動圏(池田ほか,2001)

野幌森林公園地域におけるアライグマの行動圏

池田透,遠藤将史,村野紀夫 2001

酪農学園大学紀要 自然科学編 25(2), 311-319, 2001-02

のレビューです.

継続している研究の中間報告とあるけど,最終報告的なのはみつかりませんでした.

赤字は私の見解等メモです.

 

日本のアライグマの行動圏についての論文ってこれと倉島・庭瀬(1998)くらいしかないから,絶対読みたい論文ですねぇ

cf. 倉島・庭瀬,1998,北海道恵庭市帰化したアライグマ (Procyon lotor) の行動圏とその空間配置(上:本編,下:まとめ記事)

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/38/1/38_1_9/_pdf

https://satoyaman-raccoon.hatenablog.com/?_ga=2.95095772.1347485298.1586785805-265929746.1580548303

 

↓本編

https://ci.nii.ac.jp/naid/110002970119

 

 

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目次

1.  方法

2. 結果と考察

※はじめに は省略します

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1. 方法

・場所:野幌森林公園とその周辺(図1,論文にも地図載ってるがスケールや方位がないので自分用に作成)

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図1. 調査地(論文をもとにブログ作者が作成)


・箱罠でアライグマ捕獲→*八木アンテナを用いたラジオテレメトリー
・5頭(オスAB,メスABC)を追跡
・オスABメスAB:夜間を中心に随時追跡(7ヶ月)
・メスC:1時間ごと24時間(5-7月に8回)


*八木アンテナを用いたラジオテレメトリー
首輪にセンサーをつけ,離れた3点から八木アンテナで方向を測位.
首輪をつけた動物はセンサー-八木アンテナを結んだ3線がつくる三角形の重心にいると推定.GPSが小型化する以前から個体追跡で用いられていた手法.

 

※「オスABメスAB:夜間を中心に随時追跡(7ヶ月)」の「夜間を中心に随時追跡」っていうのをもうちょっと細かく書いてほしかったな...

 

5地点以上測位できたものを分析とかの基準

※5地点って感覚的には少ない気がするけど,それでいいのか...?

 

2. 結果と考察

表1のとおり

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表1. 月別測定一数と最大行動圏95%PeeledPolygon(https://ci.nii.ac.jp/naid/110002970119)

・冬の期間は得られたデータが少なかったが,不活発になる際に岩穴とか電波届かないところにいたから?

※こういうのを含めて測定頻度の「随時」を明らかにしてほしかった...どれくらい測位しようとして,どれくらい測位できなかったんかな...?


◎月別行動圏と中心域(本編には地図も載っている!!)
・(ざっくりいうと)利用率が急激に変わっているところを活動中心域の境界とする

※地図載ってるけど,スケールついてないからちょっとわかりにくかった...

 

・オスA(19.0-77.0ha)
行動圏:林部
活動中心域:林部
池から魚介類とか食ってる?

先行研究では林部で行動する場合行動圏広そうだけど(後述),この個体は狭いぞ...?

・オスB(33.5-144.0ha)
行動圏:林部+街
活動中心域:林部
林部を活動拠点におきながら街にも出る?

・メスA(1.5-138ha)
冬の期間には活動が行動圏が狭くなる→不活発
ただし,11月に公園外に行ったりもしてる→完全に活動が低下してるわけではない
3月以降行動圏,活動中心域の双方が拡大
春以降は活動中心域が街に進出
冬に半冬眠で春に回復してる?

・メスB(4.0-113.5ha)
冬の行動圏が極端に狭くなる.
街を中心に生息(特に牛舎)
3月は水辺ばっかり

・メスC(81.0-344.5ha)
行動圏:街
活動中心域:街

街に出るのはメスに多いっぽい?

※同じ調査地で調査しても土地利用がバラバラなのは面白い!!みんな「森と街の双方を利用」とかになるかなーって思ったけど,そういうわけではないっぽい.

※全個体で比較できるのは5月だけど,メスCだけ行動圏が広いね.後述の先行研究の2500haとかに比べて狭いのは,「都市部は餌となるゴミや休息地となるカバーが多い」と考察しているが,それは街を利用するメスCの行動圏が他個体のそれより広いって結果と合致しないなぁ.どこまでが個体差なんだろう...

 

◎*先行研究では山地で2083 haだった
←→今回(都市公園)は最大344 ha,だいたい-150 haとか

*引用されてないのでわからんが,倉島・庭瀬(1998)か.でもそんな結果は出てなさそう...?

 

◎海外の先行研究
Hoffmann&Gottschang(1977):都市部で5 ha程度
Fritzell(1978):農地・山林で2500 ha程度
→都市部は餌となるゴミや休息地となるカバーが多いから?

 

◎活動時間(論文には時間別平均移動距離のデータあるよ)
夜行性
これは原産国とかわらず

 

※個体数,測位数が少ないからまだわからないことが多いと思うけど,季節変化や利用している場所についてわかるっていうのは面白いと思った.

以上