農村におけるハクビシンの行動圏推定(鳥屋部・斎藤 2020)
鳥屋部文香・齋藤昌幸(2020)山形県庄内地方の農村景観における外来哺乳類ハクビシンの行動圏推定事例.自然科学研究33.15-20
今回はアライグマではなく,ハクビシンの生態の研究.
ハクビシンはアライグマほど侵略性は認められていない.
しかし,気候帯や垂直構造的にかなり適応性が高く,被害額もアライグマを上回る.
cf.全国の野生鳥獣による農作物被害状況
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/attach/pdf/191016-1.pdf
一方で,その生態には不明な部分も多い.
今回のレビューは,その最新の報告.
nは少ないものの,もっともよく被害が起きると思われる農村での初の報告.
興味深い!!
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◎はじめに
・日本のほとんどの地域に順応
・日本の機構に順応した高い繁殖能力
・被害も多い(全国で4億円)
・日本の行動圏の研究は森林と都市郊外→農村では報告なし
◎方法
調査地
山形県鶴岡市
ブナ,ミズナラ,スギ,果樹園,水田,住宅地
4個体(測位点が30点超える個体のみ解析)
八木アンテナでラジオテレメトリー調査
18:00-25:00
15分以上間隔あけて測定
30点以上測位点を持つ個体に対して,行動圏,コアエリアを推定
行動圏:100%最外郭法・95%最外郭法・95%固定カーネル法
コアエリア:50%最外郭法・50%固定カーネル法
※最外郭法:一番外のポイントを結ぶ感じで行動圏推定
固定カーネル:利用の密度なども考慮?
cf.
行動圏
メス1(F01):森林と農地が含まれていた.狭い→放棄果樹園使っている+測位点少ないから?
オス2(M02):森林と農地が含まれていた
オス3(M03):森林と農地が含まれていた
いずれも行動圏重複→先行研究と同じ
※アライグマは200-1400haなので,それに比べると結構小さい?
cf. 島根での報告
satoyaman-raccoon.hatenablog.com
面積は
森林>農村(本研究)>都市郊外
先行研究曰く「都市化した生息環境ほど行動圏は小さくなる」←先行研究通り
・個体数が少ない+季節も限られてた
→一般化はできない
※サンプル数は少ないものの,結果としては先行研究から推測された通りに出ていて十分にあり得そう!!
※行動圏だけでなく,コアエリアも重なっているのは興味深い!!かなり利用価値の高い場所だったのかな?コアエリアの結果も出ていたが,特に考察はされていなかったのでここに関しても考察あると嬉しい.
執筆:2021.2.2