アライグマ備忘録

アライグマに関するメモです.コメントとかで議論出来ても面白いかもね.アライグマについて詳しく知りたいな~っていう人向けです.

武蔵野アライグマ #1はじめに

武蔵野アライグマ #1はじめに

 

私は自然科学系の大学・大学院で野生動物管理を学んでいるのですが,その過程で色々アライグマを捕獲したり,文献読んだりしてきました(実はメインはイノシシの研究だったんですが笑).
その中で,やっぱり生まれ育った地元の自然科学的知見蓄積に微力ながら寄与したいなと思いました.

ということで,武蔵野のアライグマについて少しずつ情報を蓄積しようと思います.


1. 武蔵野(今回の対象地)

今回の対象地は武蔵野.埼玉南部-東京北部の地域.
明確な定義はないが,川越以南-府中以北くらいっぽい.
そこで,今回は以下の市町村に絞りたい.

 

埼玉県
飯能市入間市狭山市川越市所沢市ふじみ野市富士見市三芳町新座市朝霞市

東京都
東村山市清瀬市東久留米市西東京市武蔵野市三鷹市小金井市府中市国分寺市国立市立川市武蔵村山市昭島市,瑞穂町,福生市羽村市青梅市東大和市

 

武蔵野の自然環境の特徴としては,武蔵野台地と狭山丘陵が挙げられる.
武蔵野台地は荒川と多摩川の間の約700m^2の台地.


狭山丘陵は武蔵野台地中央に位置する丘陵.所沢市入間市東村山市東大和市武蔵村山市,瑞穂町にまたがる.中央山地から少し孤立した丘陵地で,"緑の孤島"とも呼ばれる.里山景観が有名.

※地質学には疎いのでいくぶんか不正確な記述あるかもしれないです

 

2. アライグマ生息情報

まず,現時点でわかっているアライグマの生息情報をまとめたい.

とりあえず以下を読みました.


野生動物保護管理事務所(2008)平成19年度関東地域アライグマ防除モデル事業調査報告書
岡友美,若澤英明(2013)玉川上水中流におけるアライグマと中型哺乳類の生息状況
重昆達也(2011)狭山丘陵の哺乳類.トトロのふるさと財団 自然環境調査報告書
堀井達夫,北浦恵美,横山信夫(2013)所沢市におけるアライグマ生息状況調査
農林水産省 埼玉県におけるアライグマ対策総合的な体制づくり(埼玉県の事例)
東京都自然環境局 都内におけるアライグマ・ハクビシンに係る状況

 

いずれも公開されている報告.
これらの報告のレビューは次回以降に譲るとして...


とりいそぎ,これらを超ざっくりまとめると武蔵野のアライグマ生息状況は下の図みたいになるかな?

 

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:アライグマの報告多い.確実に定着.密度も比較的高そう.
:アライグマの報告中程度.
:アライグマの報告少ない.

 

それぞれの市町村における報告は↓のようになる.

 

まずは環境省の調査.

アライグマに関する調査は2回
・第7回自然環境基礎調査(2005-2012)
・要注意鳥獣(クマ等)生息分布調査(2017)
これらのデータはshpファイルで公開されてます.もちろん報告書も.

 

www.biodic.go.jp

 

結果↓

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環境省の自然環境基礎調査結果

橙...2012(第7回調査)と2017の両方で確認

赤...2017のみ確認

(水色...2012のみ,灰色...両方でなし,武蔵野にこれらのメッシュはなかった)

この結果によると武蔵野全域に生息しているみたい.

赤い地域には新たに進出しているといえる.

 

続いて文献等その他の調査.
ただし,東京都捕獲はハンターメッシュごと.そのため各市町村の情報は,その市町村の大部分が属するハンターメッシュを参考にした.また,1頭程度の少ない捕獲の場合は青「生息未確認(またはかなり少ない)」に分類した.

 

 

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次に,中央山地帯や狭山丘陵の地形を載せてみよう.

 

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...たいしてなんもわからん.


ただ,少し気になるのは狭山丘陵(所沢-武蔵村山間のモヤ)の北西と南東の温度差.
狭山丘陵はアライグマのホットスポットになっている可能性は高い(というかなっていると思う).
しかし,武蔵村山東大和は生息情報が少ない.東村山に至ってはほとんど生息情報が得られていない.

 

個人的には,これ,過小評価なだけな気がするんだよな...

 


というのも多くの文献は目撃情報捕獲数を根拠にしている.このどちらも生息評価の指標としては怪しい.


まず目撃情報.アライグマはガッツリ夜行性で,感覚的にはタヌキやハクビシンよりも目撃しにくい.この時点で,過小評価しやすい指標であると言える.


捕獲数について.埼玉は年5000頭捕獲していて,東京は年500頭.10倍も差がある.東村山や清瀬などのベッドタウンはアライグマの農業被害も少ないし,狩猟も全く盛んではない(東村山の農業は果樹に偏っておりアライグマの被害は少なそう?).

 

ただ,本当に東村山・清瀬・東久留米が生息密度低いんだったら,逆ホットスポットとして管理の観点上興味深い要所になりうる.

 

 

3. 今後の予定
とりあえず軽く目を通しただけの文献をしっかり読みます.レビューもするかも.
その後,少しずつ調査を始めたいと思う.


まずは寺社仏閣の爪痕調査.時間的スケールでは評価しづらいけど,かなり簡単に在不在情報を得られる調査法.

cf. アライグマ爪痕調査(2021.4.25.追記)

satoyaman-raccoon.hatenablog.com


次は自動撮影カメラと餌トラップ法.自動撮影カメラはかなり詳細な情報を得られるけど,いかんせん金銭的に数をかけられない.餌トラップ法は↓参照.爪痕調査よりも確実に最近の訪問を知ることができ,自動撮影カメラよりも数をかけることができる.

satoyaman-raccoon.hatenablog.com


そんなこんなで地元のアライグマ情報を蓄積するぞ~
いつか防除計画や誰かの研究に役立つといいな.

 

2021.2.5. 執筆

2021.4.25.追記