【現場の工夫】レビュー:近畿地方アライグマ防除の手引き(環境省近畿地方環境事務所 2008)
近畿地方アライグマ防除の手引き(環境省近畿地方環境事務所 2008)の一部レビューです.
第3部 アライグマの防除技術と取り組みの現状
2.侵入確認から安楽死措置までの技術
をレビュります.
本編はこちら↓
https://www.env.go.jp/nature/intro/3control/files/racoon_kinki.pdf
かなり詳しい技術書として以前紹介した北海道アライグマ防除技術指針よりも進んだ内容になってますね~
近畿地方環境事務所は独自に実験とか調査しているので,とても魅力的な内容です.
論文化していない現場の知恵が詰まってる感じ.
cf. 北海道アライグマ防除技術指針について
個人的には
・侵入確認手法:餌トラップ法
・捕獲手法:Egg Trap[追加装備]
がアツかった
自分用メモなんで省略が多いですが,本文はかなり詳細に書かれているのでCheck it out!!
赤字は個人の感想です.
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目次
1)侵入確認[アライグマの早期侵入確認]
2)捕獲
4)安楽死措置
※3)捕獲時の移送・保管 /5)最終処分は省略
※基本的でほかの文献でも口酸っぱく言われている内容については省略
※安楽死処分も大部分省略
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1)侵入確認[アライグマの早期侵入確認]
◎侵入確認は極めて重要
・アライグマオス成獣の最大行動圏は 5,000ha
→直線距離で 7km 以内で確認されたら対策せよ
◎住民情報では確証得られない場合は餌トラップ法やカメラトラップ,専門家による痕跡調査を
①餌トラップ法
・平成 19 年度近畿地方アライグマ防除事業で開発された手法
・両手を器用に使うことのできるアライグマの特性を利用
・筒状のトラップの奥の餌がなくなれば「アライグマがいる」とわかる
・大量に長期間設置可能(安価/餌の工夫)
・ペットボトル型/塩ビ管型/樋型
・誘引効果によってその後の捕獲効率を高める
・殻付きピーナッツがよい
∵扱いやすく/腐敗しにく/自然界ではなじみの少ない(タヌキ・イタチ・サルなどの興味をできるだけ惹かない)
※たしかに侵入確認って,低密度だと捕獲もされないし目撃も少ないしで難しいと思うけど,この手法なら低コストで広範囲見はれるから有効な気がする
※根絶直前の低密度地域での歩哨としても有効化かも!?
②足跡トラップ法
・墨汁/炭/消石灰などを置き,そこを通過した動物の足跡を残す方法
・課題:風雨にさらされた状況では日持ちしない
・ニュージーランドの Connovation 社の Trakka Card
特殊なインクと紙→野外に放置しても 2 週間程度は足跡を得ることができる
・安価
・場所選定能力や足跡判別能力,かさばる
※餌トラップ法があるのにわざわざこれを使うメリットはないのかな?
※でも足跡はっきりうつるのは楽しい
③カメラトラップ
言わずもがな.
本編ではデジカメを使ったものについても言及
※カメラ高いんじゃ.被害出てない地域でカメラに高いコストは払えないだろうから...
④アライグマの痕跡による確認
言わずもがな.
※寺社仏閣の爪痕ならまだしも,田んぼの足跡とかは発見が偶然性に左右されますよね...
2)捕獲
①箱罠[改]
・踏み板式を塩ビ管内の餌を引っ張ることで扉が落ちるように改良
・90 度に曲がった塩ビ管を先に付け,その奥にヒモのついた餌を入れる
※とてもラクーンキューブに近い構造.これがもとにラクーンキューブができたのかな?ラクーンキューブは箱が小さい印象だけど,これなら大きい個体も入るね.実証実験の論文ないから効果気になるね
※cf. ラクーンキューブ
https://www.choujuhigai.com/fs/chiikan/s-0129
②エッグトラップ
・アライグマ以外ではサルおよびネコがエッグトラップ内に手を挿入できるが,タヌキおよびキツネは手をいれなかった
・サルについては中に餌が入っているのを見せなければ手を入れない
・ネコについては上からぶら下げた状態では手を入れていない
cf. 近畿地方環境事務所. 2006. 第 1 回 近畿地方アライグマ防除モデル事業調査検討会 議事次第
http://kinki.env.go.jp/wildlife/mat/data/m_2_1_1/m2_5.pdf
※独自に研究してどんどん改良してるのすごいな!?論文化してないのかな~
↓
・容器内にエッグトラップを設置
・捕獲後の個体収容も楽
※アライグマ(というか野生動物?)は暗いところが好きっていう特性も使える!!
※アライグマは目が悪くて触覚嗅覚で採餌するからカバーついてても餌に気づくんだな
※その後の回収ボックスの役割も果たせてて感動
※ただ,Egg Trapの大きな魅力であるコンパクトさはつぶしちゃっているね
※cf. Egg™ Trapで捕獲されたアライグマを回収するための誘導型捕獲箱の開発
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/51/2/51_2_257/_article/-char/ja/
4)安楽死措置
・安楽死の基準については「米国獣医学会の安楽死に関する研究会報告 2000(AVMA ,2001)」を引用
飼育動物は
①疼痛,直接的なあるいは将来的な不安を伴わずに,意識消失及び死に至らしめること
②意識消失に要する時間
③信頼性
④人に対する安全性
⑤不可逆性
⑥要求及び目的との適合性
⑦傍観者あるいは作業者に対する感情的な影響
⑧安楽死後の評価,実験あるいは組織の利用との適合性
⑨薬剤の利便性及び人の乱用の可能性
⑩種,年齢及び健康状態との適合性
⑪用いる器材が適切に作動するよう維持できること
⑫肉食動物/腐肉食動物が死体を摂食した場合の安全性
野生動物には加えて
・野生動物にとっては人との接触・保定・移送がストレスとなること
・作業員の安全や精神的ストレスにも考慮すべきであること
・そして衆人の反応にも注意すべきである
その上で実際に使われる手法として二段階麻酔法と二酸化炭素法を紹介している.
以上